中国はなぜ軍拡を続けるのか、中国の国内状況から説明する。
しかも孫文の中国革命から国共内戦時代を経て現在に至るまで軍事にとらわれずに辿るので、中華人民共和国の歴史を知るという意味でも大変勉強になる。
建国当初、政府組織は実体がなかったため、解放軍が行政の前面に立っており、これは軍事管制と呼ばれた。解
...続きを読む放軍の掌握が権力の基盤となるため、国家主席や党総書記よりも中央軍事委員会主席が重要なポストだった。十元帥の1人だった彭徳懐は、解放軍の現代化、正規化を目指したが、廬山会議で毛沢東の大躍進に中止を求め、これがきっかけで毛沢東と対立し、文化大革命では迫害にさらされがん治療も許されず悲しい死を迎えた。林彪が国防部長を務めたいた時期はソ連との関係が悪化、人民戦争へ回帰し、軍人が政治的に台頭したが、林彪も反逆者のレッテルを貼られた。軍の重鎮を迫害した四人組は、毛沢東が死去してからはリベンジに遭い、一網打尽にされた。
バランサーとして鄧小平が台頭し、改革・開放路線へと舵をきったが、胡耀邦、趙紫陽といった改革派は梯子を外され失脚した。第二次天安門事件は共産党の首脳にトラウマを植え付け、西側諸国には中国が軍を使って民衆を迫害したということで国際社会でのイメージも悪化した。鄧小平の後の江沢民、胡錦涛という文民主席は、解放軍の後見を必要とし、軍拡という軍との共生関係を補強した。中国と日本の国交正常化も、中国の民衆のあずかり知らぬところで決まっていて、しかも情報が偏っているのだから中国社会の世界観が混乱したという指摘。生産手段を共産党が独占していたため、党幹部の懐が潤う一方で法治が整っていないためにその財産を海外に逃がしてしまうため、国内に富みが循環しない構造があった。国内をまとめるために排外主義を使い、それで民衆が排外主義的になることで中国の外交政策は自縄自縛状態というのがなんとも。
2017年時点で著者は中国軍の能力には懐疑的だが、現在の本当のところはどうなんであろうか。例えば海軍艦艇であれば数が増えているだけでなく近代化もしているとみているが、これが実際どうなのかは戦争が起きてみないとわからないかも。