絶滅のおそれのある動植物の密輸・売買事件などを捜査する警視庁生活安全部生活環境課環境第三係、通称「警視庁生きものがかり」に所属する「生きもの事案」のエキスパートである著者が、その携わってきた事件やエピソードをまとめている。
種の保存法などは知識としては知っていたものの、あまり警察と結びつけて考えたこ
...続きを読むとがなかったが、警察の仕事にこのような「生きものがかり」ともいえる分野があったのかと、興味深く通読した。「生きもの事案」は、殺人や窃盗などと比べると地味な印象を持ちがちだが、それを取り締まることは、我々の生活の基盤である生物多様性の保護につながる非常に重要な任務であるということを感じた。また、様々な動植物が登場する「生きもの事案」の捜査のエピソードは、知的好奇心を刺激し、読んでいて普通に面白かった。
本書で紹介されている著者の仕事ぶりは、まさに「プロ」だな、と思わせるものがあった。著者の仕事の仕方やエピソードは、「生きものがかり」の仕事だけでなく、あらゆる仕事に役立つ普遍的なものが多いと感じた。特に、著者が「生きもの事案」を十八番としたように、仕事において、これだけは誰にも負けないという得意技を持つというのは、素晴らしいことだなと感じた。また、著者が動物・生物の専門家、動物園や植物園の担当者などと知り合いになり、ネットワークを広げていき、それを捜査に活かしていたように、自分の業務に関わる分野について、いかにネットワークを築き、いかにその分野に通じた人とつながるか、ということが大切だということを再認識した。