表紙が好みなのと、帯の煽りに惹かれて購入。
短編4作、読みやすかったのでざっくり全編感想。
全体としては、ストーリーは面白かったけど個人的には物足りない点が諸々、という感じかな。
あんまり残酷すぎるのは苦手だけどイヤミスが読んでみたい、という方にオススメだと思います。
以下完全ネタバレ。
『
...続きを読むマグノリア通り、曇り』
人は、野次馬としての無責任な悪意は抵抗なく人にぶつけるが、責任が伴う状況で悪意を実際の行動に移すとなると、躊躇う。
そんな人間の弱さや狡さを考えさせるお話。
ストーリーは面白かったのだけど、不満なのは、まず犯人の動機。言い分はわかるけど、それでそこまでする?と思ったら家族を先に殺してて、その動機は借金と、口論きっかけ…。
そして、娘まで手にかけたにしてはカラッとしてるのが異常者感あるけど、なぜ犯人がこうなったのか?は特に無くホワイダニット大好き人としては物足りない。でもまあ、そこ掘り下げる目的のお話じゃないもんね。
あとは、オチが!娘の無事を祈って終わり。
実はすぐ近くに隠されてて、主人公が見ると既に娘は死んでいて、主人公はただ殺人犯にされただけだった…とか。
主人公が行動を起こすのが遅れて犯人は情報を渡さないまま死に、娘の居場所は永遠にわからず、野次馬が犯人の死に大盛り上がりする中で主人公だけが絶望…とか。
とにかく、もっともっと絶望感を味わいたかったのでした。
『夜にめざめて』
4作中最もあっさりしたお話に感じた。
犯人はわかりやすいので予想は裏切られず、まあそうだよねという感じ。
自警団への対処はスカッとする。
弟の思いも割と納得できるし、うんうん、そうだよね!と読める。
薄味だったので感想も薄味で笑
『復讐の花は枯れない』
これも、お話の流れ自体は面白かったと思う。
けどやっぱり犯人の動機がなぁ〜…。そもそも、なぜ甥を我が子のように思っていたのだろう?そこもっと深く知りたかった。
あとやっぱり、我が子のように感じていた甥を奪われた哀しみや辛さを味わわせたいはずなのに、対象の家族に決定的な危害は加えないのが違和感あって、気になってしまった。
そこが動機なら、やっぱり家族を殺さないと!もしくは、死ぬより辛い目に遭わせないと!と。
速水に西田の娘を、西田に速水の息子を殺させて、互いはその様子をただ見ているしかできない、とか。
結局、過去悪いことしてた速水と西田が死ぬだけなので、悪いやつがまあ死んだなって感じで。
何の罪もない存在が不条理に殺されてこそだよな〜〜〜と。
『階段室の女王』
この本でこれが1番好きです。
この感想を書きながら、やっぱり私は犯人の動機や心境、行動が詳細に描かれるのが好きなんだなぁと改めて実感した。
主人公は、自分に無いものを持つ者を妬むし恨む。自分に嫌な思いをさせるやつは死ね、と思う。
自分の悪事は決して誰にも見つからないようにと願うし、我が身可愛さに嘘も吐くし隠蔽もする。
その場しのぎの計画性のない犯行や嘘はすぐに破綻するし、どんどん悪い方へと転がり落ちていく。それでも、目を逸らし逃げ続ける。
そんな主人公の身勝手さや醜さにはイライラさせられる(褒め言葉)のだが、同時につい共感してしまいそうになる暗い魅力がある。
弱くて醜い。人間ってこういうところあるよね、と思う。自分にも似たところがきっとある。そんなふうに思うとまた後味が悪くなる。
こういう作品好きです。
4作目が好みだったので★3にしました。