6年前、祖母の葬式があった。22年同じ家で暮らしてきた、頑固で偏屈な祖母であった。背は小さく、料理は下手だったが、南瓜の煮物だけは得意で出された時はよく食べていた。生前付き合いが少なかった祖母であったが、盛会となり、会場は酒が振舞われ、寿司や揚げ物が盛り付け並べられ、笑い声が多くあり、これまで近親者
...続きを読むの死に立ち会ったことのない私は、なぜこの人たちは大声で笑っているのだろう、と悲しむとともに理解できずにいた。
また別の話だが、実家に暮らしていた時、兄弟3人、同じ部屋の三段ベッドで寝て起きていた。三段ベッドといっても、1番下はコロがついていて、引き出して使用するものだったので、実際には二段ベッドだったが。誰が言い出したかわからないが、ベッドの並びも上から生まれた順に使っており、1番上の私は天井に1番近く、祖父が設計し、当時で築30年の間に染み付いて取れない雨漏りの染みを眺めながら寝ていた。
読みながらそんなことを思い出した。どこか遠くの出来事を見させられているようで、しかもその出来事は大したことはなく、取り上げる、書かれる内容なのかどうかわからない。いまも不思議な気分だ。ただ、この小説を読み進めるうちに、これまで忘れていた、記憶の蓋が開いては中断し、閉じてはぼんやりしながらまた読み進める、物語に没入するというより、たわいもないエピソードを通じて、自身の家族を省みる、そんな読書体験だった。
p127
みんなでほどけていった婆ちゃんの代わりに話しよるんやもんな。ほどけて…、そう、婆ちゃんの周りの白か部分ば、花で覆われて真っ白なその周りば、話し続けて埋めてやりよる。昔のことば代わりに思い出して、忘れ果てて、ほどけてしまった婆ちゃんの記憶ば縫い合わせよる…