当時の日本の選択を政策決定の状況に焦点を当てて考察している本。
なぜ戦争突入したのかと考察する本はいろいろあるけれど、この本は白眉だと思う。
当時を考える際、考慮するものがたくさんありすべてを見て考えるのはあまり現実的でないので、「誰」によって、「どのような政治過程」を経てああなったのかに焦点を当
...続きを読むててみることでとても明瞭な話になっていてとても分かりやすい。
この手の話は陸軍が諸悪の根源とされがちで、この本でもそれは変わらないのだけれど、天皇の責任、海軍の責任も重要だとしてるところが興味深かった。
とくに海軍が戦争を容認しなければ絶対にアメリカと戦争をすることなどなかったとする話はそれほど重視する人が居ない気がするが、とても重要な指摘だと思う。
なぜそういう話になったのかと言うのが副題にも書かれている「両論併記」と「非決定」だという話は、現代においても同じような話にあふれているように思う。
政治にかかわっていた人間が無能だとか悪意を持っていたという話ではなく、みなが自組織の利益のためにと合理的に行動した結果が、だれも得をしない破滅への道だった――しかもその決定がもっとも自分達の利益にかなうと信じていた――となると笑うに笑えない。
現代でも総論賛成各論反対と言った話は無くなってないし、反対勢力を納得さえるためとはいえ論理が一貫してない話を用いたり、超絶と頭につけたくなるくらいに楽観的な見通しを基に計画を立てて話を進める。それでいて決定をひたすらに先送りにする。そんな組織にまともな決定ができるわけもなく。
示唆に富む話が多く、当時の政治における大変さや緊張感がとてもよく伝わる本でした。
特に御前会議を開催して天皇の前で審議、採決された「国策」が何度も何度も、時には依然とは相反する話が間を置かずに新たな「国策」として採用されてた話などは、義務教育できちんと教えておく必要がある気がする。