誤解を招きやすい帯ですが、メインはゾンビではありません。ゾンビでわかる「神経科学」です。ゾンビマニアな神経学者二人が、ゾンビ的な動物やゾンビ的な行動を元に、生きている人の脳のしくみを解説する、ちょっと難しめな入門書。
最初はなかなか読み進まなかったのですが、一度勢いに乗るとこれが頗る面白い。クジラ
...続きを読むの半球睡眠、ホヤの脳消化、首なし鶏のマイク…。においが記憶を呼び覚ますのは、嗅覚だけが視床を通過せずダイレクトに新皮質、とくに感情と記憶を処理する皮質領域に到達するから。カプグラ妄想やコタール妄想も興味深いです。
第11章、脳をハッキングする話。これもすごい。脳にDBS(脳深部刺激)という小型の電極を埋め込んで特定の電気信号を変え、パーキンソン病などを治療しようという試み。文字通り、脳をハックするんですね。SFの世界だ。それからオキシトシンに警鐘を鳴らしているのには溜飲が下がりました。p141《オキシトシンは自分の属する社会集団の内部で仲間意識を高めたり社会的行動を増やしたりすると思われるが、外部にいる者への攻撃性を強めることになる。》
いろいろ楽しくて書ききれないのですが、ブラウン=セカールの研究「動物の睾丸から採取した液体の男性への皮下注射が生じさせる影響についてのノート」(1889)はもう少し調べてみたい。本書には結論が載っていなかったので。あと、テレビでたまに見かける猫屋敷の怒りっぽいおばさんは、トキソプラズマに感染しているんじゃないかしらとか。