ゼロカーボンが騒がれる中、米中の国家戦略から今後の趨勢を占う本作。緻密な取材とデータに裏付けられており、関連本の中では現時点で間違いなくトップクラス。
中国のゼロカーボン戦略の強かさとその完成度に驚くとともに、日本での危機感の欠如に衝撃を受けた。
途中出てくる曼荼羅のみ微妙ではあったが、全般的に
...続きを読む一読に値する本。
ゼロカーボンについて簡単に整理すると、元々1997年に制定された京都議定書ではCO2を削減しようというレベルであったが、環境悪化がより深刻となり、2016年のパリ協定において、CO2排出量を実質ゼロにするという概念にまで踏み込んだことで普及した概念。
EUの国々が中心であった宣言に対し、中国が国際覇権を握るために同様の宣言をしたことで、日本、アメリカも続き国際的なムーブメントへと至った。
CO2排出量を実質ゼロにすることは、ただEVを導入したり省エネ家電を買うだけでは到底達成できず、発電方式を原子力や新エネに切り替えたり、スマートハウス、産業界における構造変革、CO2の回収など、総合的な対策が求められる。
そんな中、中国は新エネルギー(太陽光、風力)、原子力の分野で覇権を握り、EV、スマートハウスへと食指を伸ばし、圧倒的な地位を築いている。
アメリカは、トランプ政権時のパリ協定離脱などの影響もあり、上記において出遅れる形となったが、カーボンネガティブ(CO2を減少させる)など、ゲームチェンジ可能な技術に勝機を見出している。
日本は残念ながら弱者として、唯一の強みである自動車産業を基軸に、うまくアメリカと足並みを揃えることが求められている。