当時の住銀中堅社員の目線から見たイトマン事件の記録。
あくまでも当時の著者の立場から事件を振り返ったもの。
●危機を察知してからも行内は保身や派閥争いで動きが鈍い。そうこうするうちにイトマンの借金は劇的に膨れ上がる。銀行の危機察知から詐欺師たちの巻き返し、住銀のカネをしゃぶれるだけしゃぶり尽くそう
...続きを読むとする詐欺師たち、それに操られる会長、幹部、イトマン、、。
●行内政治、イトマンでの多数派工作、社長の追い落とし、、財界の大物でもある磯田会長を篭絡していた詐欺師、会長や役員に直電する詐欺師、、これ恐ろしいのは事件の全貌はいまだに明らかになっていないということ。今後も明らかにはならない。数千億円が闇に消えた。
●謎は30年たっても謎のほぼ謎のまま。伊藤寿栄光とは何者なのか。そもそも不動産でイトマンの取引相手、それが役員クラスでスカウトされて社長と二人三脚で不動産投資に邁進する。さらにするするっと住銀の会長と昵懇の仲になり、住銀役員に電話で指示したりもする。イトマン社長の嫁が当たり前に5000万円受け取ったとか、イトマン社長は会社のために頑張っていたのか私欲が絡んでいたのか、その辺も謎。磯田会長の娘が勤務する会社での絵画取引、ここに許永中が絡むがここらも謎が多い。登場人物が何を考えてそんなことをしていたのか??というのはわからない。イトマン処理反対派の役員らもどこまでのことを知ってそうしていたかはわからない。磯田会長もどこまで何を知っていたのか知らなかったのかわからない。そういう積み重ねがイトマン事件であるバブルであったというところだろうか。
・磯田会長は戦前生まれのバリバリエリート。
・70歳すぎても住友銀行に君臨、アンタッチャブルな存在に。
・一人娘を通じて詐欺師が侵食。
・磯田会長派の役員は磯田の子飼い。高卒を磯田が引き上げた。
・イトマン社長も磯田の子飼い。高卒を磯田が引き上げた。
・イトマンには住銀が首都圏進出やら初期の不良債権処理を押しつけた貸しがあった。
・著者は中堅幹部候補として事件を知って処理する方向へもってこうと悪戦苦闘。
・著者の上司が当時は役員だった西川善文。のちに頭取として君臨。
・著者が住銀辞めたあとに楽天副会長やらになるのは全て西川の後ろ盾によるもの。
・そういえば東芝もとある社長が傍流の子飼いを自分の出世に帯同させて引き上げて社長にまでして原発で失敗してグループ解体へまっしぐら中なので似てる構造。
・エリートたちの世界はコネ、同期、兄弟分、子飼いなどの関係性でつくられている。案外に狭い世界。そこに地べたにいた詐欺師が入り込んだことで起きたのがイトマン事件などなどバブル期の事件。