両親の仕事の関係で叔母の元から学校に行くことになったひびき。町の様子を見て歩いているとふしぎな古書店にたどり着いた。そこで出会った青年レイジは自分は福の神だと名乗り、ひびきを「福の神の弟子(仮)」と決めるのだった。
古書店がタイトルにあったので手にしてみました。いわゆるイマドキの児童文庫ですね。可
...続きを読む愛い絵と親しみやすく突飛なキャラクターが読者を引っ張ってくれます。
古書店が出てくるとは言え、メインとなる舞台は学校なので古書にまつわる謎だとか蘊蓄だとかでは物語が展開する訳ではないです。それでもはじめの事件は本がキーアイテムとなりますし、本が好きな小学生が主人公なので所々に本(それも実際にある本)が出てきてアクセントになっています。
またこの物語は主人公ひびきの一人称で書かれています。一人称小説は主人公に感情移入しやすく、物語の展開もわかりやすいのですが、主人公がわからないことは読者に示せない(示すことが難しい)という面も持っています。
ここではそれが巧く作用し、ひびきが気付いていないひびき自身の気持ちが引き出されることがクライマックスに用意されています。それまでにひびきが気付いてないけれど引っ掛かっていることが示され、読者が同じようにそこに引っ掛かりを感じることでひびきと共に問題を乗り越えるのでしょう。
そしてひびきが気付かない気持ちを気付かせてくれる人物の配置も絶妙です。これもキャラクターで引っ張る物語ならではの効果なのかなとも思います。
クラスメイトにつきまとうストーカーの正体は? 音楽室に現れたのっぺらぼう、ひびきに訪れるふしぎな世界。果たしてひびきは「福の神の弟子(仮)」として3人の人を幸せにできるのか?