テニス男子の錦織選手、怪我に悩まされている様ですが、最近のニュースで私が知る限りでは、順調に活躍している様です。ATP順位もテニス関係者が夢にまで見てきた、10以内をキープしていて凄いですね。テニス人気も上昇してきたようです。
錦織氏の年収は億を超えて、移動にはプライベートジェット機を使用している
...続きを読むのを聞くと、プロになったらサッカーや野球の選手のように稼げるのだろうな、とこの本を読むまではそう思っていました。
ところが、この本では、そうではないテニス業界の実態が書かれています。日本でも多くのプロテニスプレイヤーがいるそうですが、筆者が賞金だけで食べていけるラインを1500万円としていますが、それをクリアーしている人は、たった6人(2015年、p199)というのは驚きでした。他のスポーツ(サッカー、野球)と比較して、そのレベルの違いは大きすぎますね。
プロになれるのは一握りなのに、生活できるのは更にその数パーセントという現実を知り、サラリーマン生活をしながら、週末にテニスを楽しんでいる私を振り返って複雑な思いを感じました。しかし、テニスのプロになる厳しさをこのような本を通して知ることは大変良かったと思いました。
以下は気になったポイントです。
・テニスは長い試合だと3時間以上流れる、視聴者が目にする時間が圧倒的に長いのがテニス、スポンサーから見るとバリューが高いスポーツである(p7)
・4つのグランドスラムの本戦に出場するだけで、すべて1回戦負けだったとしても、1600万円の賞金が得られる。そのために必要なのが世界100位のポジションである。世界中の天才たちが、同じ天才たちと熾烈な競争を勝ち抜いてやっとたどり着ける(p9、11)
・世界のトップ100の選手で10歳から始めている選手はゼロ、一番多かったのは5-6歳、10歳からでは間に合わない(p23)
・福岡の柳川高校はインターハイで14連覇(1967-1980)、福井烈は高校時代は負けなし169連勝、それ以降は部活を経験していないクラブテニス出身、2000年代からは通信制の高校を選ぶ人もいる(p35)
・スペインでは18歳でトップ100が見えなければ、別の道に進むことを勧められる。(p38)
・打つところは打つ、守るところは守る、試合の中で変化をつけることが大事、これが勝ちに行くテニス(p61)
・盛田ファンドの援助を受けて目標をクリアーして卒業できたのは、錦織の他には、西岡・中川の2人しかいない。(p69)
・自分の得意なショットで相手の苦手なショットを打たせるようにすれば、ボールのスピードや威力が劣っていても勝てる(p77)
・他の競技と違ってテニス選手の最終目標はプロになってお金を稼ぐこと、これはアマチュアイズムと相容れず、国の援助に頼れない、結果としてテニスエリートを支えるのは家族ということになり、とてつもなくお金がかかる(p84)
・全英のサーフェスは日本人に馴染みのない芝、球速が速くビックサーブに有利、球速の遅いのはレッドクレーの全仏(p97)
・チャレンジャー大会は、世界ランキング200-300位台選手の主戦場、獲得ポイント1点を持っている選手のランキングは2500位(p115)
・ランキングが250-500位達の年間ツアー賞金は、平均190万円、年間経費が460万円という報告があるので、試合出場コストと賞金の収支がトントンとなるのは、男子は336位、女子は253位(p118)
・プロツアーは、グランドスラム(ITF)が頂点、その下に、ATPワールドツアー・ファイナルズ、ATPツアーマスターズ1000、ATPツアー500、250、チャレンジャーツアー、ITFフューチャーズがある(p121)
・ランキング100-200の選手は、ATP250とチャレンジャーのボーダーライン、200-300位の選手は、チャレンジャー大会、それ以下の選手はフューチャーズ大会が主戦場となる、チャレンジャー大会以下では、ベスト16以上にならないとポイントが獲得できない(p122)
・ランキング上位の選手も下位の選手もボールを打つスピードはあまり変わらない、大きく違うのは身体をボールのところまで運ぶ能力、足の運びのコンマ数秒の差が勝者と敗者を分ける(p150)
・ランキング200-500の選手は、そんなに力量差があるわけではない、調子を落としたり怪我をするとすぐにランキングが落ちる(p164)
・航空券を買うのに、エクスペディアという価格コム的なサイトを使い、どのエアラインが一番安い料金を提示しているかがわかる(p179)
・マスターズ1000は予選一回戦で負けで出る賞金のほうが、フューチャーズで優勝するよりも大きい。(p190)
・1位の錦織は賞金だけで3億円以上、さらに数倍のスポンサー契約を持っている、一方で日本9位の関口の賞金は190万円(p197)
2017年4月29日作成