経営破綻から2年8ヶ月という異例のスピードで再上場を果たしたJALを追い続けたジャーナリストによる、経営再建までを追った一冊。
最大の見所は経営破綻寸前のJALが、民主党政権下でいかに政治の玩具として弄ばれ、スピーディーな再建策の実施に移れなかったかを暴いた点にある。国土交通大臣だった前原誠司とい
...続きを読むう人間のエゴがなければ、赤字幅が更に膨らむ前に手を打てていた可能性は高い点において、民主党政権のいい加減さを示す1つの具体的事例と言える。
もっとも、JALの場合は京セラの稲盛和夫氏の徹底したコスト管理を行う「アメーバ経営」指導の甲斐もあり(本部長クラスに、「予算と実績に1万円以上の差異が発生したものは全て原因を報告すること」を義務付け、報告できない場合は厳しく叱責したという)、結果的には奇跡的な再建を果たせた。ただ、この点も著者によると、稲盛和夫氏と資本関係があるウィルコムがJALと同時期に経営破綻し、国による支援を受けざるを得なくなった点を絡め、本当に稲盛和夫氏がJALの経営再建を指導できる立場にあったのかという異論があったことの指摘も忘れてはならないという。
一冊でJALのごたごたを網羅的に知ることができる点で、非常に貴重だし、何よりも著者が経済紙の記者出身だけあり、表には出てこない裏事情の話も多く、とても興味深く読めた。また、JALが粉飾決算により、自社の経営状況を良く見せようとしていたかも丁寧に書かれており、生きたアカウンティングを学べるケーススタディーとしても楽しむことができる。