久しぶりに一気に読んだ児童書。薫さんの世界に引き込まれた。ユーモアにニヤリとしたり、人間の複雑さに考えさせられたり、美月や沙耶の心の底をのぞき涙が溢れたり、あらゆる感情が動かさられた。そしてタイトルどおり『ぜんぶ夏のこと』
P142美月の抱いた誤解を、海のおじさんがひもとく場面、その背景には海のおじ
...続きを読むさんとおばさんのあいだにある深くて埋められないでいる亀裂があることを感じさせる。第三者の存在がいかに大切なことかと考える。
行き場のなくなった美月のことを「理由はどうあれ、世話になっている目上の人には礼をつくさなければいかん。うちに泊めるわけにはいかない。帰れんなさい」と厳しく言ったのは、『うちに泊まったら溝ができる、あそこには、帰りたくても帰れなくなる』から。大人としての深い見解が、子どもに伝わる。
「こわい大人は、信用できるね。こわく見えるのは、きっと、正直でぶきっちょだから。まっすぐ、強く生きてるからかな。」