タイトルからして専門用語だし、他で今まで読んだことがないほどに警察内部の様子が克明に描写されていて、なんだこの小説と思ったら、著者は元本職でした。
いわゆる小説家が書いた小説とはあきらかにレベルが違い、一線をはるかに超えて、警察の内部の世界がありえないくらい惜しげもなく披露されている。物語の核とな
...続きを読むる事件自体には、奇をてらうトリックも、心を動かされるような人間模様もほとんどない。ただの、と言ったら不謹慎かもしれないが、平板な殺人事件。読ませるのは、時間を追って描写される、警察内部の捜査の進め方、それと主人公の「部屋長」の刑事としての心理の動きのみである。
つまりくどいようだが、エンターテインメントの部分が、トリックとか人間模様とかそういう部分にはないといってよく、ひたすらリアルで限りなく現実に近い、ふだん一般人が知ることのできない刑事事件捜査の内部世界が丹念に披露されている、ところにあることが、この小説(まるでドキュメントだが、それでもあくまでも小説は小説ではある)のエンターテインメント性である、というところが面白い、のかも。