アフリカ勢が上位を独占するランニングで、日本人だけは少なくとも戦いを挑もうとしている。なぜ日本人はそんなに長距離レースへの思いが強いのかに興味を持ったイギリス人ジャーナリストによる、半年間の日本滞在ルポ。
立命館大学の駅伝部、日清食品の駅伝部、比叡山の千日回峰行を終えた僧侶への取材、そして自らもラン
...続きを読むニングクラブに入り、レースに出場する。こうした取材を通して、日本人にとってランニングは武道などに近い精神的な意味合いが強いことを身をもって学んでいく。さらには大学、実業団の選手との交流を通して、ロードだけでの、しかも昔ながらの体育会的練習によるケガ、モチベーションの低下という問題や、駅伝の功罪についても語られている。
外国人の視点からみた日本のマラソンブームという切り口がとにかく新鮮です。なぜ走るのかと問われて、自己ベストのため、仲間と楽しむため、と答えつつ、どこかそれだけじゃない?と感じている日本人ランナーは多いのではないか。生活に禅的なものがしみ込んでいる日本人には、走ることは自然なことなのです。R.ホワイティング氏の日米野球論や、古くはE.ヘリゲル氏の「日本の弓術」にも通じるような、スポーツを通しての比較文化論に繋がる内容かと。ランニング愛好者には一読をお奨めしたいです。