松本隆さん自身が書いた著作はおそらく無いのではないか。その代わり、インタービュー形式で御本人の考えが書かれたものはいくつかあり、本書はその一つ。一人称で自分の言葉で語っており、実質的には松本さんの著作といっても差し支えないだろう。
他の本でも書かれていることも多々有り、重複もあるなか、目を引いたの
...続きを読むは風という目に見えないものに対するこだわり。水も似たような存在ではあるが目に見えるという事で、風が好きだという。実際、風という言葉は松本氏の歌詞にもよく登場している。松田聖子の「風立ちぬ」、寺尾聰の「ルビーの指輪」の歌いだし部分、薬師丸ひろ子の「探偵物語」の中での「言葉は風になる」などが有名であろう。目に見えないものは感じるしかない。そして愛という言葉もそれがあてはまる。古今東西の哲学でもそれに対する明確な答えは出せていないと松本氏も指摘している。
ルビーの指輪では、歌の中で場面が時を三度も変るという。最初は別れ話、次は楽しいときの話、そして最後に二年経った後も未練が残っている話。短い文章の中でこうした展開をするのは珍しいというが、その発想力はやはり非凡というしかない。