[「僕らの」言い分]小説家としても活躍する高橋源一郎と、反安保法案のデモで一躍注目を集めた「SEALDs(注:自由と民主主義のための学生緊急行動)」に所属する学生たちによる対談を記録した作品。「SEALDs」の結成とその歩み、そしてメンバーが考える民主主義について熱い議論を交わしています。
ニュ
...続きを読むースでその名称だけはよく目にしていたのですが、実際にその思うところを目にすることで、この運動がどういったものかの一端を確認することができました。いくつかのレビューでは、メッセージに「中身がない」とか「空虚」という批判が散見されるのですが、これほどまでにぼんやりとして、かつ様々なところで矛盾の綻びを抱える運動が継続するには、そもそものはじめからそういった要素が必要不可欠であろうことは心に留めておいても良いかと思います(もちろん「ぼんやりとしたメッセージ」ではなく、「ぼんやりとしたメッセージの上に成り立つ運動」が悪いということで批判されている方もいるとは思いますが......)。
一つ気になったのは、下記の引用に見られるような「SEALDs」のメンバーが抱えている真っすぐな自己肯定性。「愚かな話をしてはならない」と他人の考えを遮る「自分らを肯定」することが許される根拠や、その姿勢が独善的にならないことをどのように保証するかという点について、もう少しどのように考えているかを聞いてみたいなと感じました。それにしても、普段読まないタイプの本っていろいろと新鮮な見方が得られて面白いものですね(なんだか水野晴郎さんの言葉みたいになっちゃいましたが......)。
〜(牛田)今は肯定の運動をやってると思ってて。安倍さんを肯定しようとは思わないけど、自分らを肯定してるんですよね。自分らを肯定すると、必然的に安倍さんを否定してしまう。……(奥田)話し合いも大事だけど、ギリシアで言うところの「愚かな話をしてはならない」っていう事も大事だよなって。〜
運動や思想の軌道をたどれば当然予期される「SEALDs」が陥ってしまうであろう盲点を無視もしくは極端に軽視して、こういった若者を(おそらくは一種の郷愁を胸に抱えて)次世代の旗手としてやいのやいのと持ち上げてしまった「リベラルな大人たち」の「罪」は重いのではないか☆5つ