すばらしくよかった!
この作者さんの書く主人公は、何かしらの秀でた能力を持っていながらも、満たされていない「持たざる者」が多い気がします。
サリも優秀な精霊使いでありながら、迫害されて育ち、現在も周囲に馴染めないという陰陽でいえば陰に属する者です。
対するパートナーのラルフはエリート街道まっしぐらの
...続きを読む陽キャラ。
加えて精霊使いに対し見下していることを隠しもしない尊大な男で、いろんなところの感想から噂には聞いていましたが、本当に初期のラルフは嫌なキャラでした。
ここまでお互いに対して冷めきってる主人公たちはめずらしいくらい。言い争ったりするシーンも、ケンカするほど仲がいいんでしょって感じではなく、好意が微塵も感じられない。
仕事だけ!のリアルなビジネスライクの関係でした。
だからこそ2人の能力が入れ替わってから、なし崩し的に始まる少女とふたりの旅の中で、ラルフが変わってく姿がうれしくて、温かかったです。
そしてサリの抱える冷たい孤独がバクという存在を通じて描かれていくさまは、痛々しく切なく印象に残りました。
クライマックスで内心を吐露したサリの姿は、普段彼女が雄弁に語るキャラクターでないせいか余計に胸にグッとくるものがありました。
そのサリを受け止めるラルフには、最初が最悪だったせいもあり、すごく感動させてもらいました。
全体を通じて恋愛色は薄めというかほぼなかったのですが、それ以上に人の心そのものを描いた綺麗な作品でした。
と思ったら、続編が雑誌で描かれていて、そちらは恋愛メインでした。ああ感無量。
この作者さんのお話は優しくない世界で優しい人が描かれていて好きです。