自分とは相いれない思想の本をこれほどしっかり読めたことはない。私は教育はもっと個の能力の開発に焦点を絞るべきだと思っているし、成長を希求することが社会全体の活力につながると信じている。
でもこの数十年日本にはびこるおかしな「自己責任論」と「個人主義」には強い違和感を覚えている。
この本はまったく
...続きを読む違うアプローチではあるが、同じ問題点をとらえ、個々の事例で具体的に説得してくる。
この本の主張に簡単には同意できないが、対立項として読むべき価値のある本だ。
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現在の社会的な価値観でもって「排除」され、力を奪われたまま、社会保障で「包摂」される。その包摂に「自立支援」という発想が色濃くなってきたのだ。「排除されてから包摂する」という現在の社会保障のあり方をとう作業が、私たちの課題として明確になってきた。
スタートラインが一直線だということが前提の「機会の平等」は、個人の努力だけで人生の課題を乗り越えようという考え方であり、それは個の発達重視の近代教育思想の限界でもある。