もともとは昭和38年の発刊。2002年に文庫が出て、いつの頃かに買ったまま本棚の隅に眠っていたのを、海外転勤の際に持ってきてようやく読みました。期待以上に面白かったです。
「新手一生」の升田幸三。大山康晴名人の兄弟子でもあり、将棋小僧なら知らない人はいないという有名な方。将棋界の最後の勝負師らしい
...続きを読む雰囲気を持った勝負師といっていいのではないでしょうか。本書では、将棋から彼が得た人生訓を勝負師らしい鋭い切り口で紹介しています。
中でも、将棋の駒のそれぞれの特徴を熟知し、一見関係なさそうな場所の駒も含めて全て活かすことができるのがプロの技であり、それはビジネスや人生にも通じるということが繰り返し強調されているのが印象に残りました。特に、歩について。会社を訪問すると、偉い人を見るよりも、受付や一般社員といった歩の人たちの態度、振る舞いを見ると、その会社の現状や将来までもだいたいわかってしまうとのこと。なるほど、そうかもしれない。歩の強さって、日本企業の強さの源泉であったかもしれない。
また、高段者が他と違うのは、頭ではなく身体で相手との間合いを感じ取ることができることなのだそうです。当時まだ若手だった、加藤一二三さんや二上達也さんを、まだまだ頭で将棋をやっていると評価しているのは将棋ファンとしては興味深いエピソードでした。