休暇で滞在していた宿の一室で、とある成金の老人がガス中毒死した。現場の状況は、自殺にも他殺にも取れる様子だった。保険会社の専属探偵であるブリードンは、保険金の支払いが絡むこの事件の調査へと趣くことになる。
たいへん英国風のくすぐりに溢れたミステリでした。(読みながら流石ノックス。宗教事情も絡ませつ
...続きを読むつ、物語を描写するときの視線の置き所が英国的。ミステリお約束の「ワトソン役をお望み?」と奥さんに言わせる辺りとか、もー判ってらっしゃる、と感心することしきり)
宿の照明が未だガス灯によるもので、一つの元栓からスタンドランプと壁掛け式ランプの2箇所へとガスが枝分かれに配給されていて、それぞれにもガス栓が付いてる……ってところから、本書のタイトルは「三つの栓」なのですね。
現代の、このキモになる『ガス灯』とは縁遠い生活となっている私たちからは仕組みのイメージが湧きづらい所がありますが、ちゃんとこのややこしい、栓が開いてる/閉まってるのところも図解で解説されてて良かった。
探偵役が二人いる(刑事と保険会社の探偵)ところも、交互に推理を披露するという推理合戦の様相を呈してワクワクするし、関係者皆になにやら怪しい行動や動機がチラチラ見え隠れする上に、当の本人が自殺している可能性まであるので、一体誰が殺人犯なんだー?と最後まで真相を読ませないプロット、堪能いたしました。