恥ずかしながらコメニウスのことも知らず、本当にたまたま書棚で目について、タイトルからしていきなりピンときた。即購入。
コメニウスの汎知学の視点から、世界のあらゆる事象を子供向けの絵本として、教科書として整理した本。しかし、それは350年前の世界への案内役として抜群の役割を果たしてくれる。
350年
...続きを読む前の世界観を想像するにあたって、これほど具体的にしかも絵によっていとも容易く現前させてくれる本が他にあるだろうか。文字だけならスラスラとあっという間に読み終われるが、基本的にはテキストの解説に挿絵があるというよりも、挿絵の解説にテキストがある、と読んだほうがワクワクできる。これだけ細かい註釈の添えられたイメージはなかなかない。アレゴリーを読んでいくように350年の時差を解くのが楽しい。
そういう意味でも残念なのは、挿絵が文庫本だからなのか質が悪く、十分に解読できないところだ。
高山宏が解説を書いており、そして、その中でコメニウスにはじまり、18世紀に別の形で現れた「視覚による啓蒙」への注目者、紹介者としてバーバラ・スタフォードの「アートフルサイエンス」を紹介しているところで、自分がピンときたものが既にお見通しのものであったと知って悔しくなる。
ここ数年をかけて、読みにくさではなかなかのレベルに達している高山宏によるスタフォードの邦訳作品5冊を読んだのだから、このタイトル、この挿絵にピンときたのは、既に仕組まれていた罠だったわけだ。
しかし、罠にちゃんとはまれることは割と大事だ。
良い罠だった。