日本が近代国家を目指していた明治時代、日本人は太平洋や東シナ海の無人島へ進出していた。その多くは、国家主導の領土拡大ではなく、民間人がアホウドリの捕獲を目的とするものだった。
無人島に生息するアホウドリは人間を知らないため、人を見ても逃げることがないし、飛び立つには長い助走を要する。そのため、人間
...続きを読むは地表で歩いているアホウドリを棍棒で撲殺することができ、その羽毛は高値で取引された。当時の日本人は南洋の小島でアホウドリを乱獲し、その島でアホウドリが絶滅するや、次の島を探すことを繰り返した。その露骨な活動はやがて、アメリカや清国との領土問題にまで発展する。
ルール、ルールで縛られている現在社会において、こうした日本人の海賊的行為はある意味、痛快だ。その代表が、玉置半右衛門。アホウドリがカネになることにいち早く目をつけ、次々と無人島を見つけては、島の開拓を名目にして日本政府から補助金を分捕る。安い労働者を島に送り込み、ひたすらアホウドリの羽をむしらせて、莫大な財産を築いた。
ところで、鳥島のアホウドリで思い出すのが吉村昭の小説「漂流」だ。本書とセットで読むとおもしろい。