松坂世代も40歳、次々に引退。松坂大輔という太陽を中心に光る人々それぞれの人生。今この時期だからこそ読みたい一冊。
ちょうど本書を読むタイミングで藤川球児、渡辺直人の引退のニュース。松坂世代の現役も数えるほど。
過去に「松坂世代」という良著を書いた筆者。松坂世代の2020年現在を描く。
前著と
...続きを読む比較して野球以外の道を選んだ人選が目立つ。スポーツマネジメント、介護事業、ユニホームクリーニング、鉄板焼き屋店主、競輪選手、プロレスラー、アナウンサーなど。
自分はプロレスはほとんど興味無いが、明徳義塾出身の関本大介というプロレスラーの話が面白かった。そうあの明徳義塾。PL との延長17回の熱闘の翌日の準決勝。さすがに先発できない松坂が9回リードされた場面で登板する。マウンドに立った瞬間の5万人の絶叫、大歓声。ヒールとなった明徳義塾、控え選手としてスタンドから観戦する関本の原風景。
「あのときの松坂のように、会場の雰囲気を一瞬にして変えてみたい」
社会人野球の名門、日本通運の監督を務める澤村幸明。松坂世代とは知らなかった。1996年夏の甲子園の決勝。松山商業の1点リードで9回ウラも2アウト。追う熊本工業、最後の打者として打席に入り同点ホームランを打った1年生が澤村である。松坂世代で最初に名を挙げた澤村だが皮肉も皮肉も最初で最後の甲子園となる。
プロ入りを果たせなかった選手、プロで活躍出来なかった選手。指導者としての道、裏方の道、全く違う世界。松坂世代の選手たちのその後、また松坂大輔の存在がじっくりと語られる。スポットライトを浴びる人生も良いが、頑張っていればそれ以外の人生も悪くない、そう思える、読者にパワーを本書は与えてくれる。
たいていのノンフィクションの良作はいつ読んでも良いのだが、本書については賞味期限つき。出来れば今年のストーブリーグが始まる前に読んだ方がいい。
松坂世代それぞれの元野球少年の人生にエールを送る素晴らしいノンフィクションでした。