博物館や美術館に展覧会を見に行くのは好きだが、芸術は門外漢
である。巨匠と言われる芸術家の名前はある程度知ってはいるが、
芸術界のことなど丸っきり分からぬ。
それでも、本書が取り上げているのが「スキャンダル」なので面白く
読めた。
戦犯画家として日本を追われたという藤田嗣治のパリへの脱出の裏話。
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その藤田を始めとした戦争協力の為に多くの戦争画を生み出した画家
たちの、自分の身だけを考えた軍部への積極的な関わりは興味深い
そしてなんといっても面白いのは、尽きることのない贋作事件だ。
金目当ての贋作製作は勿論のこと、練習として描いた師の模写絵が
画商の手によって贋作に生まれ変わる。
それだkではない。物故作家の未発見の作品が大量に世に姿を現すと、
現存している作品の価値が下がる為に「贋作だ」と決めつける風潮もある。
芸術作品なんて、価格があってないようなもの。だから、バブル期の
ように純粋に芸術作品として楽しむのではなく、投資の対象になるの
だろうね。
本書では東京大学に並ぶ芸術の最高峰・東京芸術大学での派閥抗争や、
その受験戦争にまで触れている。全編、興味深く読める良書である。
学歴社会だ、権威主義だ、なんていろんなところで言われるけれど日本の
芸術界が最も権威主義が幅を利かせている世界なのではないだろうか。