権力とは何か。国家や企業がかつてのように安易に権力を行使できないのはなぜか。「より入手し易く」なった一方で、「使いづらく」なった権力の”衰退”のメカニズムを、幅広い視点から解き明かした一冊。
権力とは、物理的強制力、規範、説得、報酬によって他人を動かす力であるが、世界的な豊かさの拡大とヒト・モノ・
...続きを読むカネ・情報の移動に伴い、人々の権力に対する意識が変化したことで、権力に対する「参入障壁」が弱体化し、所謂「マイクロパワー」の台頭が政治、ビジネス、宗教等あらゆる分野で進行している。これらの動きは、イノベーションによる選択の自由というメリットをもたらす一方、特定の利害を代表する個人やNGO、小規模政党・国家の増大は、円滑な意思決定の阻害要因にもなっている。
権力の「過度な集中」と同様に「過度な分散」も危険であり、無秩序化といったリスクを避けるためには、人々が政治を再び信頼すべきであるという主張は、著者のベネズエラ開発相としての”挫折経験”をふまえれば多少、割り引いて考える必要はあろうが、「権力」を切り口にして今、世界で何が起こっているのか知るには十分に読み応えがある。余談だが、本書を読むと、日本の「安保法案騒動」が世界的には”周回遅れの議論”のようにも思えてくる。