『臨床心理学小史』というタイトルではあるが、現在の教育言説が前提にする心理学的言説をコンパクトに概説した本。そのため、むしろ、学校教員をはじめとした教育関係者が読むべき本だと思った。
著書自身も「あとがき」で書いているように、できる限りわかりやすくコンパクトに記述することを目指して書かれており、様々
...続きを読むな心理学的理論が混在している教育言説を整理するための「整理棚」を提供してくれる。
一方で、(臨床)心理学者たちによってもたらされた知見がもたらした負の側面(例:戦時における知能検査の利用)や、その知見が誤読されることによって生じてしまった負の側面(例:愛着理論にもとづく「母親(=女性の親)」への過度な焦点化)についても論じられている。カジュアルながら、歴史を批判的に検証する視点も踏まえられており、それが本書での心理学史記述を独自なものにしている。