沢村賞投手、いま日本先発投手陣でも5本の指に入るだろう金子千尋の本。金子千尋というピッチャーは、とにかくバランスが取れていて、直球も変化球も一級品。コントロールも良いし、完投できる体力もある。
本書では、ピッチングに関する考え方や変化球の握り方、リリースするときのイメージまで事細かに記載してあるの
...続きを読むで、実際に野球をプレーする選手や少年少女の教えるコーチ、細かい知識が大好きなコアな野球ファンまでも満足できる1冊になっている。
■観察→発見→実践→言語化(再現可能な仕組み作り)
一流選手はビジネスの世界でもきっと一流になれるだろう。それくらい、人の技を自分のものにするのがうまい。金子千尋は上にあげたスパイラルを繰り返していた。取り立てて自分の強みはないと言いつつも、一つだけ、普通の人よりも優れているかもしれないと前置きした上で述べているのがこれ。
「頭のなかでイメージしたことを、すぐに体を使って表現できること」(P66)
例えば、カーブやスプリット、チェンジアップといった変化球の投げ方1つとってみても、例えば斎藤和己の投球を参考にし、あまり深く指を握っていないことを見つけたり(観察→発見)、鞭ではなく棒のように投げると表現してみたり(実践→言語化)、最終的に言葉まで落とし込んで再現可能なようにしていた。
金子千尋の言葉を借りればこうだ。
「一歩ずつ階段をあがっていくなかで、いろんなシーンを凝視し、自分のなかに取り入れたことを何度も実戦で繰り返した結果、こうして言葉で説明できるようになった」(P39)
■一流は一流を生む
プロ4年目の時、野茂英雄が臨時コーチとしてオリックスのキャンプに来ていたときのこと。当時の金子千尋はシュートのコントロールについて悩んでおり、右バッターに見極められることを課題として捉えていた。野茂に相談した。プレートの位置に着目した野茂は一言、
「一塁側から投げていたら?」(P55)
と言ったそうだ。もともとプレートの位置に関して三塁側から投げていた金子はシュートを大きく曲げてコントロールしなければと考えていた。一塁側から投げることでストレートゾーンからボールゾーンへ小さな変化で右打者のインコースを突くことができ、コントロールの向上につながった。
一流は一流を生む。ポテンシャルが大きいもの同士であれば、短い間の対談やコンタクトでもその影響は計り知れないほど大きい。
■全体を通して
人と違ったことをしたいという性格(オールスターでの全球変化球勝負宣言が有名)だったり、変化や成長に対する強い意欲を感じる。2014年終了時点でNPB通算90勝。200勝目指して、モチベーション高くまだまだ高みを目指してくれそう!第4回WBCでもエースとして活躍してくれ!