ESGとTNFD時代のイチから分かる 生物多様性・ネイチャーポジティブ経営
著:藤田 香
森林や海洋、農地、そこに暮らす野生生物たちを保全し、それらの天然資源を上手に利活用しながら折り合いをつけていく経営が企業に求められるようになってきた。「生物多様性に配慮した経営」、言い換えると「自然資本経営」
...続きを読む、「ネイチャーポジティブ経営」が重要であり、中核的な経営課題になりつつある。
TNFDが企業に求める自然の開示は、企業が既に取り組んでいる開示の枠組みなどど整合したものにするとしている。具体的には、CDPや、自然に関する科学に基づく目標の設定手法を開発している団体であるSBTN、国際サステナビリティ基準審議会をナレッジパートナーとしている。
本書の構成は以下の7章から成る。
①ネイチャーポジティブ最前線
②キーパーソンの声を聞く
③先進企業のネイチャーポジティブ経営を知る
④持続可能な調達の現場を知る
⑤金融機関の自然への投融資を知る
⑥TNFDや評価ツール、規制を知る
⑦法律や戦略、用語を知る
言葉や概念だけを捉えれば、腑に落ちて理解するのには非常に難解である。しかし、確実にこれから企業や個人の意識としてもグローバルにも必要であることに疑う余地はない。
本書では、法律的な説明もしっかりとされているものの、間口を広げて非常にわかりやすく理解しやすい構成となっている。実際にTNFDの開示を行っている企業の具体例を紹介する等、誰しもが知っている企業とネイチャーポジティブを関連させて、具体的なイメージが付きやすい形で理解を後押ししてくれている。
利益につながるから、利益を損なうからネイチャーポジティブ経営を行うのではなく、企業のサステナビリティと地球のサステナビリティを近い位置で意識し、誰しもが安心して暮らせる「今」と「未来」を守り続けるために行うべき、宇宙船・地球号の一員としてのやるべきことを企業・個人としての対応を気づかせてくれている。
新しい概念は、何度も触れ、アンテナを立てながら、多くの情報に触れることで点がつながり、理解につながる。そんな土台をつくってくれる一冊であった。