さすがクライトン
スピード、ストーリー、シンプルと3つのSがそろった傑作。
上下巻だが一気に読み通すことができる。さすがクライトンだ。
プロローグもエピローグもなく、冒頭から一気にストーリーが展開する。登場人物の背景もなにもない。ただただ一気に戦場に出発し、気づいたら最前線だ。
海底
...続きを読むに長さ800mもある宇宙船が発見される。周囲の状況から、海底には500年は眠っていることが明らかに。軍に率いられた科学者たちは謎を解明に向かうが、船はブラックホールを経由して未来のアメリカからきたものであることがわかる。
続いてのドッキリは、その船には宇宙で拾ったと思われる不思議な球体が格納されていること。ファースト・コンタクトだ。科学者の一人が空洞であるその球体に入ってから周囲には不思議な現象が起こり始める。
ラストにかけて、球体に入った人間は「すべてのことを無意識にうちに具現化できる能力を持つ」ことが明らかにされる。その能力は恐怖や弱さ等人間の弱い側面を強調するため、理想的なものとモンスターが同時に作られることになる。
無意識が作り出した恐怖の象徴であるオオイカなどのモンスターにより、一人ずつ科学者たちは死んでいく。そして3人しか残っていないとき、その能力者がいったい誰なのかというパニックが最高潮に達して一気にクライマックスへ。
いつもの通り、用意した題材やスピーディーに変化するストーリー展開に比べてエンディングは尻切れトンボの印象がぬぐいきれないが、間違えなくこれは彼の最高傑作の一つだろうと思う。