「自分は通り過ぎていく人間だと思っていた。
上を通り、下を通り、通り過ぎる。」
孤児で第一次大戦で兵役を経て、密造酒取締官を業としている主人公インガソルは、自分の人生をそう考えていた……一人の赤ちゃんを拾い、一人の女性と出会うまでは。
1926年から27年夏までに幾度も発生したミシシッピ川流域の記
...続きを読む録的な洪水。
いつ終わるともしれない長い雨によって、繰り返しミシシッピ川とその支流が氾濫し、人人の生活を壊していった。
特に、農業労働力であるアフリカ系アメリカ人の被害は甚大で、直接被害がなくても農場が駄目になり職を失うことにもなった。
物語は1927年4月、アメリカは有名な「禁酒法」の時代、弱弱しい太陽と刻々と高まる川の水位のなか、インガソルは相棒のハムとともに行方不明になった同僚の調査のために潜入捜査にはいる。
そこで偶然拾うことになる孤児の赤ん坊が縁で、密造酒作りの女性と出会う。
ハヤカワ・ミステリ新書版の帯にあるように「これは、愛の物語」。
特に、終盤は息をつかせない展開で、パニック映画さながらのアクションシーンが満載。
少し表現が気になったり描写がくどく感じるかもしれないけど、エンディングがとてもよいので、すべて許される……そんな物語でした。