忘れてはいけないのは 人間は心というものを持った瞬間から自然界とは切り離されたところにあり 潜在的にこの宇宙で生きていく上での苦悩を背負っているということ
その苦悩とは ヒューマニズムに陥ってしまう愚かさであり 逆に自然との共生を望んだとしても決して対等な関係性を築くことが出来ないと知るに至ることで
...続きを読むある
しかし重要な議論は 後者の自然と人間との溝に絶望を感じた先にある(ヒューマニズムは問題外)
文中の多くの箇所で童話からの論考の展開がなされているわけだけれど 直ぐに人間社会へと集約して作品の世界を捉えようとするところに少々強引さを覚え 鼻についた
先に記した「自然と人間との溝」を意識下においた上での人間社会へのアプローチを展開できれば 重層的な思考の展開が描けたのではないか
といった事を考えたわけだな
とはいってもこの本には 宮沢賢治から「贈与」された多くの言葉を丹念に拾い集め そこから次の時代へとつながるメッセージをすくい上げる事に成功している
お見事です