積ん読状態から解放すべく読んだ。
享保4年(1719)、関東西部の村々に突如大流行した岩船地蔵。
各地に残った文書や岩船地蔵を元に、流行の経路や当時の人々の熱狂を掘り起こす、という内容。
あらましを一読するだけでわかるこの地味さ。
けれども、路傍にただ佇んでいた石仏が調査によって意味を取り戻して
...続きを読むいく様は、読んでいて楽しい。
個人的には、江戸時代に度々起こった種々の流行神についての記述がおもしろかった。
農民たちが社会体制に収まりながらもそこから逸脱するという、奇妙な爆発。
「ガス抜き」と一言で片付けることのできなさそうな現象というところに興味が湧いた。
副題に「歴史探索の手法」とあるとおり、何か対象物の背景に迫る方法のお手本のよう。
だけど大事なのは根気と人脈、という感じ。
まず根気。
著者は約30年もの間、岩船地蔵の調査を続けているとか。
しかも半ば以上、趣味として。こんなことはなかなかできないね。
そして人脈。
この調査は実に多くの人に支えられてます。
著者が培ってきたつながりが、岩船地蔵の情報を生み出してる。
ただまぁ一番大事なのは著者自身が楽しそうってところかな。もう読んでてわかる。
新たな発見があるたびに小躍りせんばかりに喜ぶオッサ…もとい歴史学徒の姿が目に浮かびます。