ブロックチェーンの解説書。ビットコインを中心に決済システムがどのように変わる可能性があるかについて、丁寧に説明をしている。
ビットコインについては、ハッシュやマイニングなど基本的な技術要素についてある程度自分も知っているからなのかもしれないが、わかりやすく説明されている。ビットコインのセグウィット
...続きを読むの追加やブロックサイズの変更などの議論についてはあまりよく知らないところだったのだが、少しわかったような気になった。ビットコインのノードはこの本が書かれた現在で11,000程度存在すると言うが、ボランティアベースでそれだけのシステムがすでに何年間途切れることなく動いているのは大きな可能性を感じるところである。
本書のポイントは、法定通貨・電子マネー・仮想通貨の分類論、ブロックチェーンの分類論、具体的ユースケースとその机上検討、といった辺りだろう。仮想通貨を「強制通用力のない決済手段で、汎用性および転々流通性を備えるもの」と定義するのは分かりやすい。ブロックチェーンの分類でパブリックとプライベートだけでなく、自由参加型・許可型の区別についても明確になっており、整理論として納得できる。シェアリングエコノミーやスマートコントラクトによってブロックチェーンは注目を集めているが、実際に不動産などの登記システムに使った場合の問題点の整理はよく考えられている。「ブロックチェーンによって表現することに適しているものは、ブロックチェーン上においてのみアセットが移転すると表現できるようなもの」という指摘は的を射ている。
そのブロックチェーンエコノミーを第一層の決済サービス、第二層のブロックチェーンプラットフォーム、第三層の法制度の執行システム、という三層構造を成しているとして、これから国際間での覇権競争・通貨競争が始まるとしている。日本は現金の利便性・信頼性が高いことと電子マネーが世界のどこよりも広がったおかげで仮想通貨が広まらない可能性があると指摘する。それは、仮想通貨をあえて使わなくてもよいことであり、その方向性は著者も指摘するように不合理なものではなく正しいというが、その上で国際間での主導権を握る争いには戦略的に参加をするべきであるのだろう。そのときには、指摘されるように、仮想通貨を広めるために、利便性よりも利得性が重要になるだろうということなのかもしれない。
ブロックチェーンを大きな視点から考えるにあたって、考えるべきポイントの整理に役に立つ本。