チャイナドレスを軸に、近現代中国の服飾・文化・生活を俯瞰していく。
著者は東北芸術工科大学専任専任講師で、専門は服飾人類学/東アジア比較文化論/近・現代中国史である。
読んでいる自分自身はファッションにさほど詳しいわけでもなく(着ているものはいつもいい加減(^^;))、服飾の歴史となるともちろん門
...続きを読む外漢なのだが、この本はおもしろかった。
150ページ弱で比較的薄い本だが、写真や図版も多く、興味深く読めた。
中国女性といえばチャイナドレスが思い浮かぶが、実はその歴史はそれほど古いものではないという。元になっているのは満州人の旗袍(チーパオ)。清朝政府が弁髪とともに服飾も満州風にしたがうよう強いた政策に始まる。
チャイナドレスはその長くない歴史の中で、満人対漢人、北(北京)対南(上海)、伝統対流行、国産生地対輸入生地と様々な対立の流れに翻弄されつつ細かく変遷を遂げ、現在の形となっている。文化大革命の頃にはブルジョア的なものとして一時、民族服に追いやられた形になるが、その後、復活を遂げた。
「申報」(新聞)や「良友」(雑誌)の記事や広告が多数掲載されていて興味深い。論説や記事からは、女性が華美に走ることを戒める圧力が感じられる。抑圧されつつもしたたかに生を謳歌している女性像というのも、何となく浮かび上がってくる。
*とはいえ、チャイナドレスは着たことがない。生きている間に着る機会があるかなぁ(^^;)?
*朝日新聞の楊逸さんの書評から。お薦めから拾うのは、『チーズの歴史』(ブルース・インターアクションズ)に続いて2冊目。自分では目が行かないような本を紹介してくれるので、毎度、楊逸さんの書評はちょっと楽しみ。そのうち、ご本人の作品も読んでみたい。