アラブの春の波がエジプトにも押し寄せ、ムバラク打倒のデモが始まった2011年1月から、ムルシーが大統領を追われムスリム同胞団が解散される2013年9月までの2年半を丹念に描いたルポです。
それにしても、エジプトって軍の影響力が強烈なんだねぇ。軍は政治経済を支配しているのに、一方で大統領と対抗しており
...続きを読む、国民からは味方だと認識されているという、まさに得体のしれない組織だという事がよくわかります。そして、その軍には毎年13億ドルがアメリカから供与されていること。
また、同じイスラム諸国の中でも同胞団を支援する国、軍を支援する国があり、事態を複雑化させています。
イスラエル・パレスチナに隣接し、スエズ運河を握るエジプトの地政学的重要さがよくわかります。
何より驚きなのはムルシーがアメリカの大学を出て、アメリカの国籍も持っているという事。
それにしても、理解が難しいのは、選挙で選ばれたムルシーが「民主的勢力」で排除されるという矛盾。これについて著者は、多数決を是とする限りイスラム勢力が権力を握ってしまう政治の現状。これに対して「民主派勢力」は多数決をとらない民主主義を目指すと指摘しています。欧米流の「民主主義」が必ずしも幸福をもたらさないという現状を思い知らされました。