心理学の有名な実験をとりあげ、その背景にある心理学者の理論的立場を洗いなおすことで、心理学がどのような仕方で人間をとらえようとしているのかという問題に取り組んでいます。
メタ心理学的な考察が展開されている本だといってよいのではないかと思いますが、哲学的な方法論に終始しているのでもなく、学説史的なか
...続きを読むたちで心理学における人間観の変遷を追うといったスタイルをとるのでもなく、やや著者の方法論がわかりにくいように感じました。やや乱暴にまとめてみると、現代的な心理学の諸研究・諸実験を幅広く紹介しながら、必ずしもそうした研究・実験をおこなっている心理学者自身が意識していない理論的前提を問いなおすことに、著者の力点が置かれているといえるのではないでしょうか。
必ずしも本書の中で明確な結論が導かれているとは思えなかったのですが、現代の心理学がそれぞれの個別的な問題領域にとらわれてしまっていることへの批判的な観点が示されているように感じました。その点では、ともすれば見失ってしまいがちな本質的な問いかけがなされていて、興味深く読みました。