≪2023年3月号≫月刊 書店員すず木

≪2023年3月号≫月刊 書店員すず木
この道10年以上のプロ書店員・すず木です!
前月に配信された新作マンガで実際に読んで面白かったものの中から<少年・青年マンガ><少女・女性マンガ>それぞれ1作品を勝手に「今月の書店員すず木賞」としてご紹介!

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今月の書店員すず木賞

少年・青年マンガ

      • 星屑家族 上

        星屑家族 上

        完結

        家族を「許可」するのは、子ども。 「扶養審査官」という名のもとに、子どもたちが親を審査する――。 子どもを持つ事が免許制になり、人々は「理想」の社会を手に入れた。 「扶養審査官」のヒカリは、日々、親たちの審査を繰り返すうちに、ある日、訳アリの夫婦と出会う。 家族のカタチを見つめなおす、S...

        親ガチャ問題を打開するために、もしかするとこんな未来があるかもしれない…。正しさとは幸せとは…と考えさせられる物語。

        舞台は少子化の加速に加え虐待やネグレクトなどが大きな社会問題となり、「子供を扶養する」事が免許制となった未来。
        管理局が派遣する「扶養審査官」である子供により扶養資格適正審査が行われ、合格して晴れて「子供」を有することができます。
        逆に言えば扶養適正者として認められなければ「落第者」のレッテルを貼られ、社会的信用を失ってしまうのです。
        この物語はひとりの扶養審査官と、彼が派遣された扶養者失格になることを望む夫と合格を願う妻との物語。
        虐待による子供の死を報じるニュースを見る度に、何故…という思いが胸を占めます。
        また「親ガチャ」や「毒親」という言葉が一般的に認知されるようになったことも、そこに至るまでにどれだけの犠牲があったのか…と思わずにはいられません。
        そういった現状を踏まえた、この物語の“子供は親を選べないということが問題なら親を選別すれば良い“という設定に衝撃を受けました。

        しかしこの物語が凄いのは、子育てに対する社会風刺だけに留まらないところです。
        主人公の扶養審査官である少年・ヒカリが派遣されたワケアリ夫婦が抱える問題やヒカリ自身のエピソードが複雑に絡まり物語の奥行となっており、グッと胸を掴まれるのです。
        そしてこの物語の需要な要素としてSFも欠かせません。
        扶養審査員の子供たちはどうして審査員となったのか…、扶養資格制度はどう変化していくのかも見どころです。

        上下巻で完結するので一気に読み切ることができますが、しっかりとした読み応えがあります。
        審査対象の大喜とちさに対し心無い言葉を投げる人や、扶養審査官が体験するエピソードなど読んでいてイライラするシーンもあるのですが、読了後心に残るのはそんな胸糞悪さではなく、一筋の涙が頬を伝うような…そんな物語です。

少女・女性マンガ

      • 女性に風俗って必要ですか?~アラサー独女の再就職先が女性向け風俗店の裏方だった件~ 1巻【電子特典付き】

        女性に風俗って必要ですか?~アラサー独女の再就職先が女性向け風俗店の裏方だった件~ 1巻【電子特典付き】

        完結

        コロナ不況の煽りで失業した借金持ちの私は、女性向け風俗店の裏方として働くことに……! 男性セラピストと女性客のマッチングに四苦八苦、性経験の少ない私が「技能講習」!? 「セックスレスを解消したい」「処女を卒業したい」などの女性のお悩みに、セラピスト達と協力して寄り添います――! 読者から「共感...

        女性用風俗を裏方目線で描くエッセイ!エロではなく、お仕事ヒューマンドラマ作品です!!

        コロナの影響で仕事を失った吉岡その。奨学金200万の返済を抱えているため、なんとしてでも仕事を見つけなければなりません。
        そんな時に友達から紹介されたのは、女性用風俗の事務スタッフだったのです。
        右も左もわからないまま飛び込んだ女風(女性用風俗の略)の裏方として、彼女の奮闘がはじまります。
        昨今、女性用風俗を描いたマンガに注目が集まっています。
        ですがこの物語は、女性用風俗を利用したルポマンガではなく、女性用風俗で働く女性から見た世界を描いており、今までにありそうでなかったエッセイです。

        主人公であり原案のそのさんは性知識が豊富という訳ではありません。そのため女風の現場は衝撃の連続。
        さらに女風の事務と一言で言っても、仕事の内容は様々。
        予約管理はもちろんのこと、女性客の要望に合わせて男性セラピストのマッチングを考えたり、新人セラピスト研修の被験者になったり…。
        戸惑いながらも必死に頑張る姿に思わず笑ってしまいつつも、応援したくなります!

        「手ックス」や「性感マッサージ」、「夫婦と3P」など、刺激的なキーワードが出てきますが、そこに至る物語が描かれているのでいやらしさはあまり感じません。
        ですが女性用風俗で働く男性ってどんな人たちなのだろう?アブナイ人なのでは!?と思う方もいらっしゃるかもしれません。
        描かれている女風を利用する女性はセックスレスに悩んでいる夫婦であったり、処女を卒業したいアラサー女性だったりと、悩みを抱えている普通の女性達です。
        そんな女性達に寄り添いサービスする男性達の姿には優しさを感じます。
        一般の人よりは女性が大好きな男性が多いそうなので、その分女性に対する優しさがあるのかもしれません。

        全体的にノリが良く、そのさん含め女風で働く方たちが明るくがむしゃらなので、読んでいて元気を貰えます。
        女性用風俗を利用する人と働く人のヒューマンドラマを楽しめるエッセイをご堪能ください!

こちらもオススメ!!

惜しくも今月の書店員すず木賞からは漏れたものの、オススメの作品をご紹介!!

書店員すず木

2005年より電子書籍サイトの仕事に携わる、この道10年以上のプロ書店員。
年間に読むマンガの冊数は2000冊以上。
「面白いマンガを多くの人に読んで欲しい」をモットーに、オススメのマンガをご紹介します。

最近の書店員すず木:
マガデミー賞が発表になりました!!
今年も審査員として参加させていただいたのですが、物語をキャラクターを通して楽しむのは新鮮かつ色々な発見があります。
そのキャラクターが物語の中でどう動いたのか、その影響は!?といった感じで読んでみるのも面白いのでおすすめです。

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