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「弱者男性」の75%は自分を責めている。 “真の弱者”は訴えることすらできない――。 「40代後半でカネもない 独身のおっさんに 人権なんてないんです。 そこにいるだけで 怪しくて、やばいんです」 (本書インタビューより)
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Posted by ブクログ
著述することの意義の一つは、現実の世界に厳然と存在しているにも関わらずそれまでよく見えなかったものを可視化することだと思う。比較的最近の例でいえば「宗教2世」問題なんかがそうだ。大きな問題点だったにも関わらず言われて初めてそこに長い間横たわっていたことに気付く。この本では2024年現時点で日本人の8...続きを読む人に一人、男性の4人に一人が「弱者男性」という実態が明示される。貧困であり、友だち・恋人がおらず、他人とのコミュニケーションが苦手といったことが代表的にあてはまる弱者男性だが、この数値は巷間よく揶揄的に言われる「キモくて金のないおっさん」といっていじってバカにして差別して済まされる話ではない。仕事をもたない男性にもっとも厳しいのは70代男性だそうだが、自分たちは高度経済成長期やバブル期に生き、終身雇用が維持され、お見合いは減って恋愛結婚が増えたとはいえ会社には男性社員の結婚相手候補としてOLという職種があり、社会も未婚女性に厳しい目を向けていたため、みな歳をとれば当たり前のように結婚できて、そしてその専業主婦に自分の親の介護を押し付けてきた男たちの価値観で「弱者男性はだらしがない」というのは無知による偏見であると自分は思うが、弱者男性が結婚できず正社員になれないのは当人の責任ではないだろうかと著者は疑問を投げかける。現時点を生きるわれわれの社会は弱者男性への正しい認識に関して成熟度に達していないのだ。なぜならここ数十年の間ようやく認識され始めた女性差別とくらべるとわかる。「年収300万を切る男なんて人として見れない」「その年齢でその年収って、どうして堂々と生きていていいって思えるの?」「転職なり何なり、自分で改善できたはず」という書き込みは容認されたとしても、「35歳を超えた女なんて人として見れない」「その年齢で未婚って、どうして堂々と生きていていいって思えるの?」「婚活なり何なり、自分で改善できたはず」は間違いなく炎上ものだろう(しかし後者だって30年前くらいなら全然ありだったのだ)。なぜ理解が遅れているのかは、先述したような「男のくせに情けない」という男性差別が世間ではまだまだまかりとおっていることと、「男なんだから自分で何とかしろ、何とかしなきゃ」という、結局のところ「本来男は強い者」という神話がまだ社会に浸透しているからであり(当事者である弱者男性自身も自分が置かれている状況を他責ではなく自分の責任と感じる人が多い)それが、著者はその「本来」が現在、社会背景や社会制度的においてまったく通用しない認識であるこの著作で可視化したのだと思う。正しい理解を妨げるひとつの原因として弱者男性=女性蔑視者(ミソジニスト)という認識があって、弱者男性を嫌悪する傾向もあるが、これは本書で著されているように相当な誤解であって、弱者男性のミソジニストはごくごく少数であり、ほとんどがいわゆる強者男性が女性蔑視をするために弱者男性のふりをしている場合が多いのだ。事程左様に弱者男性への社会の理解はまだまだ黎明期。こういった著作によってまずは透明な存在に社会が気付き始め、そしてようやく過渡期を迎えるのだ。
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