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自動車や家電だけでなく、ロケットやミサイルにもふんだんに使われる半導体は、今や原油を超える「世界最重要資源」だった。国家の命運は、「計算能力」をどう活かせるかにかかっている。複雑怪奇な業界の仕組みから国家間の思惑までを、気鋭の経済史家が網羅的に解説。NYタイムズベストセラー、待望の日本語訳!
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Posted by ブクログ
ここまで重要な半導体に対してなぜ今まで無知だったのか!と気付かさせる良書。 半導体をめぐる世界情勢の理解、投資で話題の半導体の今後を見据える上でも、必読だと思います。
2024.4.19、TSMCの四半期決算が発表され過去最高の増収増益決算であった。売り上げは四分の1を占めるアップル向けスマホからエヌビデアなど生成AI向けサーバー需要(24年10%前半から28年までに20%以上に)の高単価先端品に移行中でAMD・メタなどからも広く受託生産を増やしている。最先端の2...続きを読むnm品は25年量産を目指し開発中で台湾で2拠点、米アリゾナで3工場建設中、「先端パッケージング」も台湾で増産・・・『日経新聞』の当日の記事である。 この決算発表の日、この本を読み終えた。 『半導体有事』に続いて面白く読めた。 半導体は人類の未来を左右するキーファクターだ。 序章に書いてある、「典型的なチップは日本企業が保有するイギリス拠点の企業アームの設計図を使い、カルフォルニア州とイスラエルの技術者チームによって、アメリカ製の設計ソフトウェアを用いて設計される。完成した設計は超高純度のシリコン・ウェハーや特殊なガスを日本から購入している台湾の工場へと送られる。その設計は原子数個分の厚さしかない材料のエッチング、成膜、測定が可能な世界一精密な装置を用いてシリコンへと刻み込まれる。こうした装置を生産しているのは主に5社で1社がオランダ、1社が日本、3社がカルフォルニアの企業だ。その装置がなければ先進的な半導体を製造することは基本的に不可能だ。製造が終わると半導体はたいてい東南アジアでパッケージングとテストが行われ次に中国へと送られて携帯電話やコンピュータへと組み立てられる。」、半導体サプライチェーンのあらましである。 又、「台湾製のチップは毎年世界の新たな計算能力の37%を生み出している。2社の韓国企業は世界のメモリ・チップの44%を生産している。オランダのASMLという企業は最先端の半導体の製造に欠かせない極端紫外線リソグラフィー装置を100%製造している。それと比べるとOPECの産油量の世界シェアなどとたんに色褪せて見えてくる。」とも書いている。 世界経済における半導体産業の重要性と開発競争の凄まじさ、地政学的駆け引きと日本メーカー復活の可能性など歴史や技術的細部もさらに掘り下げる。 ATTベル研究所のウイリアム・ショックレーが真空管を凌ぐトランジスタを発明し半導体研究所をパロアルトに設立することが口火を切る。テキサスインスツルメント社(TI)のジャック・ギルビーが半導体集積回路を発明する。ショックレーのもとを離れた「8人の反逆者」がフェアチャイルドセミコンダクター社(FT)を立ち上げシリコンバレーの始祖となる。 ベンチャーキャピタルのセコイアを創業するクライナー・パーキンスもその一人である。 ロバート・ノイスがジーン・ハーニーとメサ型(台形)をプレーナー型(平板)にして複数の電子部品をまとめる集積回路を作りそれを他の電子部品と結合してシリコンチップに統合する。ゴードン・ムーアらがその集積回路をNASAのアポロ計画や軍用ミサイル開発用に技術開発を進める。フォトリソグラフィという工程で配線をプリントし集積度・性能を向上させ「ムーアの法則」といわれる集積化の指数関数的進化が始まる。FT社のアンデイ・グローブやTI社のモーリス・チャン(TSMC創業者)らが集積化を進め、購買者を宇宙開発・軍用から民間の大衆市場向けに転換する。 「金持ちになりたい」をエネルギー源としたエリート達の凄まじい競争が展開される。 大型コンピュータ時代のIBM、PCのIntelとMicrosoft、スマホのARMとAppleとTSMC、AIのNvidea等々人や企業の多彩なビッグネームが次々と登場し、スタンフォード大学やMITも人材供給や技術開発のバックグラウンドになる。シリコンバレー発のドキュメンタリーパノラマは興奮ものだ。 技術や人、国の政策や企業の戦略についての徹底した調査と研究をふまえて、正確・冷静な描写で読み手を引き込む表現は絶妙で滑らかな翻訳も手伝いノンフィクションでありながら本格的な科学冒険小説を読んでいるようだ。 急速で不可逆なデジタル社会の進展下、最も重要で本質的な心臓部品である半導体にフォーカスし、将来の社会を洞察するための価値ある一冊であった。 クリス・ミラーのこの作品を五つ星の評価とした。
ライフラインが石油から半導体に変わりつつあり、故に世界の勢力図も不安定になり国家間の争いも段々と表面化してきているように思います。 世界で起きている国家間の争いを半導体の視点でみるとまた違った見え方ができるのではと思いました。
クリス・ミラー著の半導体関連のビジネス書。本書はビジネス書として圧倒的な人気を誇っており、加えて、自身が春から半導体関連メーカーで働くため、読まない理由はなかった。本書は戦後から現在に至るまでの半導体の歴史を一冊にまとめた書籍である。産業の中心の米国目線で物語が書かれているため、日本のビジネス書には...続きを読むない新鮮な目線で楽しみことができた。例えば、日本が米国から半導体の覇権を奪った1980年台では、日本国内では賞賛や歓喜といった喜ばしさ一色の記され方をされると思うが、本書では日本をかなり目の敵にしていて面白かった。本書が素晴らしい理由は圧倒的な文献引用数にあるといえる。そのため、なぜ出来事や発展衰退が起こったかが、あまり専門知識を有さない私にも非常に分かりやすく理解できた。また、現在起こっている半導体バブルの原因も、ただ漠然と記事を読むだけでは決して理解できない理由も、本書を通じて多少理解ができるようになった。このように、様々な分野のインプットを行うことで、世の中の流れの解像度高くなることは非常に会館であり、死ぬまで続けていきたいと再確認した。さらに、本書を通じて半導体や技術の歴史やトレンドに加えて、地政学に対する関心が非常に強くなった。メーカー就職する前に読んでいて本当に良かった思わせる1冊だった。
熊本にTSMCが、北海道・千歳にはラピダスがやってきて、地元経済は活気に満ちているとのこと。自動運転車やスマホの進化もバンドあってこそ。サプライチェーンにおいて半導体はチョークポイントになっているーー。かつて半導体で世界を支配したとされた日本の地方や日々の生活でいま起きていることと、世界がつながる視...続きを読む点、視野、視座を持ちたいと思い読んだ。文字通り「半導体戦争」が起きていることを理解できるよい本でした。先に書いておくと、「2030半導体の地政学」(太田泰彦著、日本経済新聞出版)と併読すると、いっそう理解が深まるのでお勧めです。 個々のエピソードがとても面白い。アメリカ、ソ連、日本、韓国、台湾、ヨーロッパ、中国それぞれの覇権争いと棲み分け、起業家や大企業内部の破壊者といった個人の革新性と野心を通じたドラマがテンポよく展開される。いくら名経営者でもアンディ・グローブの下では働きたくないなあ、モリス・チャンはお釈迦様みたい変化の激しい業界で長く君臨できる強かさは恐ろしい、などなど感情移入しながら読めるのもこの本のおもしろさ。 アメリカの半導体産業の浮き沈みはジェットコースターのよう。そしてその裏側には冷戦、ベトナム戦争、湾岸戦争とつねに戦争があった。いまのウクライナ戦争やイスラエル・ハマス衝突もそうなのだろう。そして、米中新冷戦と呼ばれる状況もしかり。なので半導体戦争なのだ。 日本の話題については日本の専門メディアで読んだからディテールがやや物足りないのはやむなしとして、アメリカから見るとそうだったのかと気付かされる。東芝のおかれた状況、NANDの無念などは日本の関係者に示唆が多い。 見えてくる軸としても、民と官、自由と責任、リアルとバーチャル、ボーダレスエコノミーと経済安全保障、ファーストペンギンとキャズム、製品開発とルールづくり、などさまざま。一気に読めたけど、傍に置いてまた開きたいおきたい一冊。もう少し各社のランキングや地図入りの資料があると理解は深まるのだが、それは似た半導体本に豊富だったりするので、先の2030ーなどと一緒に読めばよいかもです。
現代の国際政治、世界経済、軍事力のバランスを特徴づけてきた立役者は半導体である。では、いったいどのようにして、私たちの世界は100京個のトランジスタと替えのきかない一握りの企業によって特徴づけられるようになったのか?が本書のテーマである。 1945年に真空管を用いて初期の電子計算機が作られてから...続きを読む現在に至るまでの、各国政府や企業、技術者達による、半導体生産に関する熾烈な競争の歴史を知ることができる本だと感じた。 この本を読んで、半導体を使ったコンピューターががアメリカで生まれた経緯や、技術の発展に日本が果たした役割、半導体製造のオフショアリングによるアジア諸国の台頭、半導体製造の技術や装置がたった数社に集中している状況など、半導体に関する非常に入り組んだ複雑なサプライチェーンの成立過程などを知ることができた。 そして、単なる半導体に関わる製品の権利による経済的なことだけでなく、『半導体戦争』というタイトルが示す通り、半導体戦略は国家間の安全保障や国防などの分野にも密接に関係しているということがわかった。
半導体がこんなに世界情勢と密接だったとは。 何が議論になってたのかが、よくわかる、ものすごく勉強になる本でした
時系列で書かれていたのでとても分かり易かった。 また、今の世界情勢や日本の立ち位置がどの様に 形成されたかが私のような素人でも理解出来る内容だった。
面白い。およそ500ページを読ませる読ませる。タイトルに全く偽りなく、半導体の世界は既に起こっている戦争と言っても良いのかもしれない。そしてそれは今を生きるすべての人に影響するし、本質的にそこに関わることのできる国家も企業もごく僅かしかいない(そして日本の影響力はゼロではないけど薄い)ことに驚かされ...続きを読むる。 Intel ceoパット・ゲルシンガーの言葉として 「石油の埋蔵場所は神が決めた。だが、工場の建設場所はわれわれ自身で決められる」という言葉が引かれている。p450 とは言っても最先端の半導体を作るために必要な投資、それ以上に製造を行うための技術、進歩をリードするための開発投資を行うことのできる企業は片手に満たないし、既にIntel自身が最先端にいないことを踏まえるとこの言葉も余り当たっていないかもしれない。油田のように突然思いもしない場所で噴き出ることはないとしても、どこでも最先端の半導体工場が建てられるかと言えば、それが人智の範囲ではあるとしてもそうではないだろう。 中東の石油、台湾の半導体、いずれもアメリカの影が濃い。現状の偶然さで言ったら台湾の半導体の方が高いかもしれない。
ボリュームが多いが、半導体の歴史と力関係、構造などがストーリー込で楽しく読めるように構成されている良書。半導体産業について理解したいならこの本は絶対に読むべき。
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