ブックライブでは、JavaScriptがOFFになっているとご利用いただけない機能があります。JavaScriptを有効にしてご利用ください。
無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで100万冊以上配信中!
来店pt
閲覧履歴
My本棚
カート
フォロー
クーポン
Myページ
8pt
男子高の二年に上がってまもなく学校に行けなくなった薫は、夏のあいだ、大叔父・兼定のもとで過ごすことに。兼定は復員後、知り合いもいない土地にひとり移り住み、岡田という青年を雇いつつジャズ喫茶を経営していた。薫は店を手伝い、言い知れない「過去」を感じさせる大人たちとともに過ごすうち、一日一日を生きていくための何かを掴みはじめる――。思春期のままならない心と体を鮮やかに描きだす、『光の犬』から3年ぶりの新作にして、最初で最後の青春小説。
アプリ試し読みはこちら
Posted by ブクログ
薫は口から空気の吸い過ぎで、身体の中にガスがたまる吞気症を患っているのだ。 常にお腹の張りを意識せざるを得ず、そのため絶えずお尻から空気を放出していなければならない状態だった。 精神不安定さが顕著になった薫は、高校2年生になったと同時に登校しなくなる。 薫は両親を説得し、夏休みの2ヶ月間、少年時から...続きを読む好意を抱いていた大叔父が住む西の砂里浜での転地療養を許してもらう。 薫が転地療養で身を寄せる大叔父の兼定は、既に70歳半ばを超えた年寄りで、戦後シベリア抑留と云う過酷な過去があった。 東京では生きる場所のないことを悟った兼定は、縁者が皆無の西の海沿いにある砂里浜と云う温泉地に生きて行く場を求め、その地でジャズ喫茶「オーブフ」を営むことにした。 そして薫は兼定の元を訪れるのだが、兼定は全面的に面倒を見るというよりも、お互いにある一定の距離を保ち、束縛のない生活を送らせることにする。 薫が兼定の厄介になる5年程前、米軍放出のダッフルバッグを担いだ髪も髭もぼさぼさの青年が、ジャズ喫茶「オーブフ」に客として現れた。 その謎めいた寡黙な男は、他人の好奇心の介入を許さない雰囲気を醸していた。 兼定は青年には何も問わず自分の衣服を与え、銭湯にでも行ってさっぱりとして来いと勧める。 青年は岡田と名乗り、身の上を説明することもなく「オーブフ」に居残り、親身に世話をしてくれた兼定を手伝うことになる。 この物語に登場する年齢差のある薫、兼定、岡田の3人は、それぞれに嫌が上にも背負わされた重荷を背負っている。 3人は共に寡黙な性格で、人との関わりは最低限の範疇で繋がることを良しとし、必要以上に他人の心の領域に入り込むことは敢えて否定していた。 ジャズ喫茶「オーブフ」をベースにして、年齢の異なる3人の人生が淡々と綴られる。
私の好きなテイストの小説。何か劇的なことが起きるでもなく、うまくまとめて大団円でもなく、これからうまく行かないこともありそうだけど、大叔父のもとで過ごした2ヶ月が主人公の転機になることには変わりないと思う。タイトルの泡はあ、そっちの泡ね!と。こんな雰囲気の店行ってみたいな。兼定大叔父のパートもヘヴィ...続きを読むだけど読み応えあり。みんながそれぞれ干渉しすぎないところが最高。
毎日が同じことの繰り返しで、自分が機械の一部になったような気持ちになったことはありませんか?しかも、何かの権威に服従するような形で。思い返せば中学高校の生活は、そうなのかもしれません。みんなが慣れていく中、そして、それが大人になることと教えられる中、それに耐える日々は苦痛かもしれません。本書は、その...続きを読むような日々を過ごす男子高校生のお話。彼は夏の間だけ大伯父の兼定のところへ居候し、その日常から逃れますが、岡田という店員の料理の手さばきなどを見て、また、自ら主体的に鍛錬するための繰り返し作業は、その人の人となりを生み出すことを知り成長する、というお話です。 鴨長明は『方丈記』で「行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。世の中にある人とすみかと、またかくの如し。」と書きましたが、本書でも波打ち際の泡を人の人生に例えて、登場人物たちの身に起こった人生を振り返ります。主人公は呑気症を抱えており、それが屁(水中では泡)となって出ていきますが、彼の心情と連動しているかのように思え、象徴的です。 ひと夏の滞在の中で主人公の薫が何を学んだのかを読み取ると、その中に、自分を重ねて色々な学びを受け取ることが出来るように練られた一冊でした。
おもしろかったー。教科書で読んでその後全部自分で集めた辻邦生の小説を思い出した。タイトルとは別に、いろいろな「匂い」が思わせぶりに登場する。どんな匂いかは具体的には分からないけど。
高校生を思い出す時、楽しかった記憶は少なく、ただ周りが期待する自分像を作って過ごしていた時期だった様に思う。 お腹がよじれるほど笑っても、その内容は覚えていない。何を考えてどう行動したのか、誰が好きだったか、何に心を動かされたのかがすっかり抜け落ちてしまっている。 一人集団を離れても良い、失敗したっ...続きを読むて構わない。自分の言葉で自分の気持ちを認めてあげられることが一番大切なんだと、気付くきっかけを作るような苦しさもなかった。ただただ、ぼーっと毎日生きていた。 大人になって、逃げることを身につけた今だから、共感できる話なのかもしれないと考えた。
著者唯一の青春小説らしい。 ジャズ喫茶オーブフで働く3人の目線で話が繋がれていく。ひと夏の物語。 それぞれが言葉にできない思いを腹に飲み込んでる。 スカッとした終わり方ではないし、これからも思い悩む日々が続くのだとは思うけれども、それでも新しい一歩を踏み出せたのだと思う。 その後のマスターと岡田と薫...続きを読むの物語が気になる
青春小説、登校できなくなった男子高校生が夏を大叔父のジャズ喫茶店で過ごして再生する話という感じの書評を読み、ワクワクして、手に取ったら、○○賞系の本だった。読み始めてしばらく時代が昭和設定だと気づけなかったし、屁・オナラという表現がするっと出てくるまでずいぶん長い。このオブラート感も有意なのかしら。...続きを読む 語り手が大叔父、高校生、時々店員の岡田と入れ替わり、しかもラノベと違って話し方に特徴がないので、今、誰目線!?となりながら読みました。眠い時には読めない本でした。でも、世界観は好きだったな。
3.8 何かにつけ生きにくさを感じる主人公・薫が、地方の温泉地でバーを営む叔父・兼定の元にひと夏の間身を寄せる。 そこで巡り会う大人達の中で、少しずつ自分の居場所を見つけて行く物語。 海辺での酔ったカオルとのシーン等は、尻のあたりがむず痒くなるような(笑)、まさに青春〇〇という感じなのだが… ...続きを読む 兼定という人間のバックボーンに、シベリアでの体験や家族にさえ望まれない復員等が濃密に横たわり、バーテンダーの岡田の醸し出す雰囲気や女達の恋の駆け引き等、時間や経験の積み重ねを感じさせる印象が色濃く、単純に「青春小説」とは言い難い。
三人それぞれ飲み込んできた言葉たちがあって、語られるものも明かされないものも、その匙加減が独特のバランスだった。 著者らしい静かな雰囲気の文章で描かれる、世代を超えたブラザーフッド的な話というのも新鮮。
ここ3作ほど松家作品に入り込めなかったが、本作は久しぶりに、描かれる丁寧な生き方を堪能することができた。まだシベリア帰りの男が生きていた時代。彼と交差した、集団の中に適応できなかった若者、少年もその後どうなっていったのか。掌編であるが、その後に流れる時間にも思いを馳せることのできる作品だった。
レビューをもっと見る
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
新刊やセール情報をお知らせします。
泡
新刊情報をお知らせします。
松家仁之
フォロー機能について
「集英社文芸単行本」の最新刊一覧へ
「小説」無料一覧へ
「小説」ランキングの一覧へ
新しい須賀敦子
アンデル 2018年12月号
火山のふもとで
試し読み
沈むフランシス
光の犬
優雅なのかどうか、わからない
「松家仁之」のこれもおすすめ一覧へ
▲泡 ページトップヘ