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この世は、すべて幻なのです。現実なんてものはない。ただ、映っている影だけが見える。そうではありませんか?――主人と家政婦との三人で薔薇のパーゴラのある家に暮らす「彼女」。彼女の庭を訪れては去っていく男たち。知覚と幻想のあわいに現れる物語を繊細かつリリカルに描く衝撃作。
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Posted by ブクログ
人が死ぬ場面がいくつかあるため、ミステリ的内容かと思いきや、村上春樹の小説を彷彿とさせる展開に新たな森博嗣氏の才能を垣間見た。
親しくなっては次々に去っていく男達。身近な者達の死を何度も経験するうちに精神を病んだ「彼女」は現実と夢を放浪するようになる。夢の中での禁断の恋を描く恋愛小説の面を持ちながら「知覚と幻想」「生と死」という哲学的思考を辿る楽しさもある。
彼女の周りで様々な死が訪れる。 読み進めていくと、彼女の現実なのか夢の中なのか分からなくなる。 果たして彼女は生きているのかさえ、分からない。 ただ、彼女の世界に引き込まれていっているのは確か。 私はこの作品を不気味だけど美しくも感じた。
現実とは何か。今自分が感じているものが本当に現実なのか、ということを考えさせられる本。 主人公の女性の周りの人が次々と亡くなっていき、彼女は徐々に精神のバランスを崩していく。そして現実と幻影の区別がつかなくなっていく過程を一緒に体験しているように感じました。 今自分が感じていることが現実なのか夢...続きを読むなのか、どうすれば区別がつくのだろう。そもそも何が現実なのか。 子供の頃に、寝る前の世界と起きた時の世界が同一であるとどう信じたらいいのか悩んだことを思い出した。
身近で関わった男たちを次々に失い、現実から離れ夢の方へ自我が侵食されていく女の行く末。 名前も出てこず、容姿の描写もなく、殊更に悪女という訳でもなく、どこか旧態然とした箱入り娘が周りを破滅させていくことが不思議にみえた。
私たちはとてもあっけないもので、 簡単に握りつぶされてしまう。 神様にも他人にも。 一生懸命溜め込んできたつもりだったのに、 最後にフタを開けたら空っぽだった。
本作は谷崎潤一郎没後50周年記念作品として銘打たれています。 谷崎と言えば、よくもあれだけ淫靡な世界を認知させたものだと感心させられますが、欲望に直線的なのでその世界観を受け入れていれば読み続けていけます。 それに比べて本作はオムニバスっぽく、情景も「風立ちぬ」かな?と思わせるようなところがあるので...続きを読む、谷崎の方向を期待すると違うと思います。 しかし、森博嗣だからこそ購入した立場からは、毛色の異なる作品が読めたという満足感が得られました。
帯の文章から、赤目姫の潮解のような話を予想したのだが。 主人公の女性の名前は最後まで明かされないし、なにか薄いベールがかかっている印象。いつもの森作品のようにぐいと物語に絡め獲られる印象があまりない。 彼女の周囲でやたら人が死ぬので、途中読み続けるのがしんどくなった。それでも最後はすっと心に落ち...続きを読むていった。 生の実感が脳細胞の電気信号に過ぎないのとしたら、現実も夢も正気も狂気も違いはないのかもしれない。 作家の意図がそういう処にあるのかは、判らないが。
不思議でちょっと不気味な世界観。 最初はミステリーかな?と思ったけど、 ミステリーではなく村田沙耶香さんのような不思議な世界観で、わたしは好きです。 周りの凄惨な出来事から目を逸らして自分自身のワンダーランドを創り上げてその世界に浸り幸せを感じるところが、映画のパンズラビリンスにも似てるかも。 お嬢...続きを読む様の彼女は15歳年上の社長の妻としてもらわれ、今まで一度も働いて給料をもらった経験がなく、最後まで年齢も名前も明かされなかった彼女はミステリアスで、描写ひとつひとつがお嬢様という感じでした。彼女が見る夢の描写もとても美しく印象的でした。彼女に好意を寄せた男性たちが多かったですが皆死んでいってしまうのが可哀想。特に、ハセガワさんとはいい感じになって欲しかった。 だんだんと歯車が狂っていく様子は読んでいて鳥肌でした。 装丁が美しすぎて、買ってしまいました。
夢と現実が交錯して、幻想的、詩的、叙情的。森さんが実際にアンプに凝っていた経験が生かされているのってこの作品なのかな?(出番は少しだけど)もっとスカッとした作品のほうが好きだけど、この物語では、気持ちが大きく動いたり人が死んだりしても、物語は静かに進行していく。静寂、凪みたいな。森さんは(書きたいも...続きを読むのは特になくビジネスで書いているのだとおっしゃるだろうけれど)どちらかというとこういう作品の方が書きたいのかもしれないなと思った。
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