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人は合理的である、とする伝統経済学の理論は本当か。現実の人の行動はもっと複雑ではないか。重要な提言と詳細な検証により新たな領域を築く行動経済学を、基礎から解説する。
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Posted by ブクログ
理系の私でも何やら行動経済学をわかった気にさせられるような、取っつきやすく読みやすい文書でした。 ある条件でのみ厳密であるモデルよりも、厳密には不正確だがある程度あてはまるモデルのほうが実用的、ということの例示として、停止しているアナログ時計は1日に2回は厳密な時刻を指し示すことができるが、1分進...続きを読むんでいる時計は一度も厳密な時刻を示すことができない。という表現があり、なるほどなと思いました。
経済学と心理学がこんなに身近なものだったとは! 経済学は脳をブラックボックスとして扱う。個人のインセンティブ、選好、信念がインプットで、行動がアウトプットである。 おもしろーい。
行動経済学の主要な理論、仮説を実証例を交えて網羅した入門的新書である。 そもそも行動経済学が背景には、従来の経済学が前提としている完全情報、完全合理的な理論上の人間行動を想定しているため、実態の経済の姿とはしばしば乖離しているため、それを補完するために研究がなされてきた分野である。既に、カーネマンな...続きを読むどがノーベル賞経済学賞を受賞している。
ありとあらゆる選択肢のなかから最適のもの、つまり効用や利益を最大化するオプションを合理的に選択することができる人。経済学は、こういう合理的な人、つまり「経済人」を理論の前提とおきます。これに対して、行動経済学は、「限定合理性」という概念にもとづき、人間の実際の経済行動にアプローチしていくものです。 ...続きを読む 人間の判断モデルとして「限定合理性」の現実的な妥当性はだれもが認めるところです。しかし、これを基盤にどう経済学や社会科学を組み立てるかというのは結構難しい問題で、なかなか具体論として前に進んでないのかなと思っていたんですが、この本を読んで、かなり目から鱗。経済学者も相当にがんばって、「限定合理性」に取り組んでいます。 長くなったので、具体的な本の内容は、読んでもらっての楽しみということにしますが、個人的には上に書いたような問題意識とのフィット感に加え、人間の経済行動を脳生理学と結びつけていこうという方向性が面白かった。 あと、「限定合理性」という概念は、私の知る範囲では、ハーバート・サイモンが提唱した概念だと思いますが(「人はmaximizerではなく、satisfierなのだ」といったことをサイモンは言っていた気がします)、サイバネティクスやコンピューター理論なんかと実は親近性のある概念です。つまり、限定合理性、脳生理学、コンピューターといえば、複雑系との親和性も非常に強いと思います。(最近はなんでも「複雑系」にしてしまうのだ。) 経済学をある程度勉強して、なんか釈然としない人には、非常に心地よい刺激に満ちた本。一方、全く経済学を勉強した事の無い人にとっては、「それって当たり前じゃん」「いつもそうやってもの買ってるよ」「私もそうやってものを宣伝して売ってるよ」という世界かも。
行動意思決定論―バイアスの罠 (マックス・H.ベイザーマン)の下位互換感はあるものの、入門書としては非常に読みやすく、実例が多く紹介されているので興味深く読めます。 人類である以上、一度は読めばいいと思う一冊です。
たぶん震災くらいの時に買ってて、それに気づかず最近買おうとしてたら、こないだ実家で見つけてホッとした本。ほんのわずかな経済学の予備知識があるとすごく面白く読める。個人的に新書の中では、中公新書の「アダムスミス」以来に面白い。市場原理なんかを前提とする経済学を「標準的経済学」と呼んで、「いや標準的経済...続きを読む学の言わんとすることは分かるけど、必ずしも理論通りにはならないよね」って内容。市場原理の否定というよりは、市場原理理論の精度を高めるために感情とか感覚とかを読み解く必要があるよね、という感じ。
行動経済学とは何かを知りたくて購入した本。お勉強モードで読み始めたが、それにしても初心者にはちょい難しかったような気がする。それでも行動経済学の背景にある歴史や、豊富な実験例がわかりやすく示されており、時間はかかったものの最後まで読み通すことができた。特に第6章フレーミング効果と選好の形成、サンクコ...続きを読むスト効果あたりは、非常に興味深い。マーケティングの視点からも、また消費者側の目線で見ても参考になる点が満載だ。
・「国富論」(アダムスミス):だれもが利得の機会を過大評価し、損失の機会を過小評価する。 ・リスクや不確実性が人間の経済行動に影響を及ぼす。 ・ヒューリスティックスに対比されるのがアルゴリズム。手順を踏めば厳密な解が得られる。 「大数の法則」:標本が大きい方が母集団の性質をよく表している。 ・確証バ...続きを読むイアス:いったん自分の意見や態度を決めると、それを裏付ける情報ばかりを集めて、反対の情報を無視したりする。 ・人間の情報処理のプロセスは直感的な部分と分析的部分の2つから形成される。 ・保有効果:ものや状態(地位、権利なども)を所有していると、持っていない場合よりもそのものを高く評価する。 ・フレーミング効果:人はまったく同じ内容のものを見ても、状況や理由によって違うように受け取る。 ・サンクコスト:過去に払ってしまってもう取り戻すことのできない費用。小さい子供はサンクコストに惑わされることは少ないが、年齢が進むにつれてサンクコスト効果が認められる。「もったいない」は日本語特有で英語にはない。 ・人にとって選択肢が多いことは幸福度を高めるどころか低下させてしまう。 ・人はなぜ将来の利得を割り引くのか。現在の自己と将来の自己は別の人間であると捉える。その関係は自分と他社の関係と同様であるという。 ・ピークエンド効果:個々の経験を総合して全体を評価するのではなく、その最も強い部分と最後の部分の印象がきわめて重要、かつ出来事の時間的長さは無関係。 ・間接的互酬性:他者に対して全行を施すと、それを受けた当事者ではなくグループの他の人から善意が返ってくることがある。=情けは人のためならず。 ・コミットメント手段としての愛情の働き:配偶者を決めることや結婚生活を維持するような長期にわたる事業を合理的計算による契約や約束によって行うことは難しい。しかし、愛情を感じる相手を配偶者とすれば、当事者に長期的利益をもたらすことになる。 ・恐怖という感情:瞬時に「逃げる」という行動をとらせる優れた装置。 ・協力行動を発生・維持するには感情が強い力を発揮する。 ・最もよく使うヒューリスティックスは多くのひとがとっている行動を真似るという「大勢順応ヒューリスティクス」 ・協力行動が社会のメンバーにとって重要であり、そこで協力行動をするものが称賛される。
人の行動は限定合理的であるという考え方の実例が多くあり、行動経済学の基礎を学ぶには良かった。 もっと負荷方式してみたい。
心理学が看板を付け替えて、ノーベル賞を取れるようにしただけの学問かと思っていたが、心理学と経済学の協働で成り立つことがわかり、割と好感を持った。 標準的な経済学の想定する人間のあさましさが積み上げられた知見により違うと分かり、そのあさましさには根拠が欠けていたことがわかった。それに基づく政策が失敗す...続きを読むるのも当然の帰結と思えた。
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友野典男
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