ブックライブでは、JavaScriptがOFFになっているとご利用いただけない機能があります。JavaScriptを有効にしてご利用ください。
無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで100万冊以上配信中!
来店pt
閲覧履歴
My本棚
カート
フォロー
クーポン
Myページ
4pt
青年コランは美しいクロエと恋に落ち、結婚する。しかしクロエは肺の中に睡蓮が生長する奇妙な病気にかかってしまう……。愉快な青春の季節の果てに訪れる、荒廃と喪失の光景を前にして立ち尽くす者の姿を、このうえなく悲痛に、美しく描き切ったラブストーリー。ヴィアンの代表作であり、20世紀フランス文学の「伝説の作品」が、鮮烈な新訳で甦る! 映画『ムード・インディゴ~うたかたの日々~』原作。
アプリ試し読みはこちら
Posted by ブクログ
詩的な表現を多く含んだ小説なのか、と思ったがこれは違う。 うたかたの日々は、一文一文を真に受け、作中世界の在り方に没入していかなければならないタイプの小説で、伏線や隠喩を解き明かすといった読書をする人にはこの作品の良さが分からないだろう。 我々が生きている世界では、肺に睡蓮は生えない。ハツカネズミ...続きを読むは踊らない。わりとちゃんと働く。 だからこの小説はレアリスムではない。が、その反面、圧倒的にレアリスムだ。 世界が綿密に描かれ、作品固有の運動していく。 それを真に受けて読んだ我々がこの本を閉じる時、今読んだものがファンタジックな世界だとは微塵も感じることはないだろう。 そこには圧倒的なリアリティがある。 リアリティとは現実に即していることではない、我々がさも現実であるかのように感じてしまうということだ、作品が世界に向かって開かれているということだ。 うたかたの日々はだから、レアリスムだと言っても良い、かもしれない。 それから、パルトルとボヴァール公爵夫人だけではなく、実存主義的なシーンはかなり沢山出てくる。 他者の死はゲームで倒された雑魚キャラのような扱いを受ける。それが社会のルールであって、主人公の一人であるクロエでさえもあり得ないほど適当に葬られる。 「醜いものは要らん」ということがまえがきに書いてあるが、この作品は生を美しく描き、死んだものには興味が無いという立場を貫いている。 俯瞰的な読み方をするなら、まず一番に浮かぶのは、生きていることの美しさと死んだ者の醜さやそれに対する社会の無情さのコントラストだと思う。
面白かった・・・。 以前に別訳で「日々の泡」のタイトルの文庫本を買ったことがありました。もう10年以上前だったか。そのときは申し訳ありませんが、何が何だか訳のせいかのめりこめず、早々に脱落。 今回は、ほぼ盲目的に信じている光文社の新訳であることと、野崎歓氏の訳ということで再購入。読破。 いやあ、...続きを読むこれはすごい小説ですね。 以下、ネタバレ。ただこの本は、ネタバレがどうこうという本じゃないですけど。 よほどの好みを持った人以外は、むしろ情報を色々仕入れてから読んだ方が良いと思います。 主人公はまあ、コランという青年ですね。この人はお金持ちで働く必要がない。ニコラという料理人を雇っています。友人でもある。 他に、シックという友人がいます。この三人は男性です。 シックの恋人が、アリーズ。ニコラの姪がイジス。そして、コランが出会い結婚するのがクロエ。この三人が女性です。みんな若くて美女です。どうやら。 コランがクロエと出会う。恋をする。ふたりは愛し合う。結婚する。 コランは労働者であるシックにお金をボンとあげる。コランはクロエと幸せに過ごす。 だんだんお金がなくなってくる。困った困った。 その上、クロエが病気になる。肺に睡蓮が生えてきてしまうのです。花が必要なんです。お金がかかります。 コランにお金を貰ったシックは、パルトルという思想家/文化人に夢中になっていて、その人の希少本を買ったりなんだりで、やっぱり無一文になります。 シックはお金がなくて、アリーズと別れます。もうアリーズを愛するより、パルトルが大事なんです。 コランはクロエのために労働してぼろぼろになります。 シックは税金未納で破滅していきます。 クロエは病気で死にます。 というお話ですね。 で、この本は、普通で言うところのリアリズムじゃないんですね。 なんていうか、サージャント・ペッパーの世界なんです(笑)。 お金の単位から人体の構造から建物まで、全部とにかくラリっちゃってるんです。 ぶっこわれてアッパラパーなんですね。 なんだけど、それは無茶苦茶なだけではなくて、物語になっている。 というのは、コランを筆頭にヒトの感情は、ものすごくわかる。切ない。 そしてとにかく、社会的じゃないんですね。一見。その奥は社会に背を向けているけれど社会に飲み込まれていってしまうので、コレホド社会的な小説もないんですけど。 ワケワカンナイことが、その内に読書的快感になっちゃいました。 後半は止まりませんでした。 解説に詳しいですが、これが書かれた時代背景とか作者のボリス・ヴィアンの生涯とか、 パルトルがサルトルとか、その辺を知ってから読むというのもありですね。 なんていうか、理解して解釈して読むとすると。 ただ、そういうのじゃないのかもしれませんね。解読してもねえ。味わうなら先入観なしで読むのも、楽しいですね。 色彩が豊かで音楽があふれて、機知と愛と憎悪と暴力と虚無と享楽が怒涛に押し寄せる快感ですね。 村上春樹さんのシュールな小説とかありますが、あれが突き抜けるとこういう風景があるんですね。 小説という地平線でとにかくラディカルであるということと、 作家そのものにポップ・スター性があったということ。 それが、ポップ・カルチャー、規制価値破壊流行とでも言うべき風俗や経済が降臨しはじめた60年代にこの本の流行を生んだことは、 僕の生前の話ですが現代史の気分的解釈では納得がいくことです。 言ってみれば小説界のセルジュ・ゲンズブールですね。 たった一冊の本で、それも60年前に外国で書かれた本の翻訳で、こんなに陶酔できるというのは素敵なことですね。 ま、それに、その非社会的というか反社会的というか刹那的というか美しい虚無というか、 そのあたりの感じがカッコイイんですよね。 ゴダールの映画に出てきそうな女の子がカフェで読んでるなら、「うたかたの日々」が似合うんだろうなあ、という発想が陳腐ですが(笑)。
キッチュ!これに尽きる。読みやすくてサクサク読みすすめられる。 ガジェット満載の楽しいB級文学といったところ。 そんなジャンル存在するのかどうか分からないけど、大好きだ。 例えば映画『唇からナイフ』を観たときの感覚。ワクワクする。 いや待て、そういやこれの映画版観にいったわ。いまはなきシネセゾン渋...続きを読む谷かどっかでやってたような……? 映画もとことんキッチュだった、それだけ憶えている(笑)。 1968年製作だから30年近く経っての日本公開。そしてさらに20年が経過しようとしている今、新訳で原作を楽しむ——なかなか感慨深い。 この物語を完全視覚化するのは難しい。チャレンジングだったろうなー。 アニメと実写混ぜて現代風にアレンジしたら、面白い映像作品になるかもしれない。60年代風ファッションと相まって、これぞまさしくフランス流“kawaii”だ。 もちろんkawaiiだけじゃない。どころか、カラフルなイメージに突如ジャックインするグロテスクなシーン、言葉遊び、青春の儚さ、皮肉、喪失感、執着の成れの果て、斜陽、すべてが灰に帰す絶望などなど、よくよく考えたら全然明るくない。 この混沌とした物語世界に、シュルレアリスムの影響がないっぽいのも興味深い。 優れた作家かどうかはさておき、唯一無二な作品世界を構築した人だとは思う。 他の作品も新訳してくれないかなぁ。
僕たちの生きる世界とはちょっと違い、まるで夢の中での出来事のような非現実的な世界設定に最初はちょっと戸惑うが、物語全体に漂う、青春とその喪失感を描くのにはこれしかないという世界が素晴らしくも悲しい。物語は(お金とか仕事とか)どんどん現実の重みに潰されていくのだが、それでも非現実感は最後の最後まで強調...続きを読むされる。そしてそれはあまりにリアルな現実の僕たちみたいだ。
「さあ行こう、猫ちゃん」 「これ、猫の毛皮じゃないわよ、オオヤマネコよ」 「オオヤマネコちゃんっていいにくいな」 ひたすらにハッピーで太陽の真下にいるような前半から物語が終わりに近づくにつれて状況がどんどん悪くなっていくのは読んでいて辛かった。儚い。ところどころに散りばめられているファンタジー...続きを読むも魅力的。
幻想的な表現も助長し、 前半は兎にも角にも甘ったるい場面や描写が多く、カロリー高めであったが、 後半の落ち方に容赦がなく、ひたすら悲しい気持ちに。 とはいえ、思い返せば前半から容赦なく人が死んでゆく世界だった。 その世界に入り込むことへの準備さえできれば、 マジックリアリズムの面白さは跳ね上がる。...続きを読む ハツカネズミの自殺で締めるのが印象的。 ーーーー 大切なことは二つだけ。きれいな女の子相手の恋愛。そしてデュ-ク・エリントンの音楽。他のものは消えていい。なぜなら醜いから。 ーーーー あらかじめ失われた恋人たち コランの日々には魔法がかけられます。 それは同時に、甘い罠でもあります。 夢見心地のうちに過ごすひとときはすでにして、何もかも根こそぎ奪っていく破壊的な力の到来をはらんでいます。 うたかたの幸福を追い求めるぼくらの日々は、いつだって危うい。 愉快な青春の季節の果てに訪れる、荒廃と喪失の光景を前にして立ち尽くす者の姿を、ヴィアンはこのうえなく悲痛に、美しく描き切りました。 ーーーー
美しく楽しい日々が結婚式を境にどんどん転落していく。誰にもどうにもできない虚しさ。ラストのキリストとの対話、ハツカネズミがとてもとても悲しい。全てを読み終えて、まえがきに「大切なことは二つだけ。どんな流儀であれ、きれいな女の子相手の恋愛。そしてニューオーリンズの音楽、つまりデューク・エリントンの音楽...続きを読む。ほかのものは消えていい。なぜなら醜いから。」とあってさらに悲しくなった。それはコランに美しい日々の思い出が残ったからなのか…コランが消えていい存在に落ちぶれてしまったからなのか…若さの美しさ楽しさ痛み苦しみがいつまでも尾を引く。
映画を見てやるせなくなったので、救いを求めて原作を読みました。結末が変わるわけではないので救われたかどうかは微妙ですが、読んだ後と前では印象がだいぶ変わりました。原作も映画もファンタジックな世界観は同じですが、映画の方が実写として現実味が強調される分、悲惨さが増しています。 その点文字だとシュールさ...続きを読むや幻想の方が引き立つので、むしろシニカルな印象さえ受けました。
ヴィアンはルイス・キャロルを読んでいたのだろうか。 ふつうのラブストーリーを想像すると出鼻をくじかれる。 原語も流行ったころのフランスの世相もわからないから理解できない。という考え方もあるけど。夢のように突拍子なく展開する物語を楽しんでしまえばいいとも思う。子どもの時に不思議の国のアリスを読んでいる...続きを読むような心持ちで。
幻想的でありながらも淡々の物語が進んでいく。 お伽話のような感覚でありながら、音楽描写も表現豊かに描かれており、 すごく切ない大人の童話。 肺の中に睡蓮が育つ病気に侵されてしまうヒロイン。 それを献身的に見守る主人公。 にしても、悲しい物語であり、純愛。 そして、最初のまえがきから、印象的。 ...続きを読む 「大切なことは2つだけ。どんな流儀であれ、きれいな女の子相手の恋愛。そしてニューオーリンズの音楽、つまり、デューク・エリントンの音楽。ほかのものは消えていい。なぜなら醜いから。」 本当にそんなストーリー。こんな物語も憎いほど好きです。僕は。
レビューをもっと見る
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
新刊やセール情報をお知らせします。
うたかたの日々
新刊情報をお知らせします。
ヴィアン
野崎歓
フォロー機能について
「光文社古典新訳文庫」の最新刊一覧へ
「小説」無料一覧へ
「小説」ランキングの一覧へ
赤と黒(上)
異邦の香り ネルヴァル『東方紀行』論
人類の深奥に秘められた記憶
ちいさな王子
フランス組曲
フランス小説の扉
試し読み
フランス文学と愛
北京の秋
作者のこれもおすすめ一覧へ
▲うたかたの日々 ページトップヘ