高遠弘美の作品一覧
「高遠弘美」の「失われた時を求めて」「七世竹本住大夫 限りなき藝の道」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「高遠弘美」の「失われた時を求めて」「七世竹本住大夫 限りなき藝の道」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
Posted by ブクログ
マドレーヌを浸した紅茶の一口から、忘れていた少年時代の日々が色鮮やかによみがえる。あまりに有名なこの作品の醍醐味は、書き手の脳裏に次々浮かび上がる記憶の断片、全体として「コンブレーで過ごした私の少年時代」とでも題して時系列に出来事を並べることも可能かもしれないある時期の記憶を、あえて断片のままよみがえるに任せ、その、時空や地理の縛りを超えてひらひらと漂う「記憶」のよみがえる様それ自体を言語化しているという、他の作品では味わったことのない体験にあると思う。
旅先のホテルでふと目を覚ました時に感じる、自分の居場所が分からなくなる一瞬の戸惑い。寝室でひとり母の「おやすみのキス」を待つ、子供の頃の切な
Posted by ブクログ
「私」は、バルベックでアルベルチーヌと「花咲く乙女たち」に出会う。
この物語を読んでいると、走馬灯のように人生の様々な出来事が思い出される。
そして、読むほどに自分の姿が露わになってくる。
もちろん、思い出すのは楽しい思い出ばかりではない、それどころか、むしろ「苦しきことのみ多かりき」なのだが、僕にとってはこの物語自体が紅茶に浸したマドレーヌの働きをしている様なのだ。/
加えて、言うまでもなくプルーストの見事なまでに精緻な恋愛心理の分析を辿っていくことには、無類の楽しさがある。
呆れるほど息の長い彼の文体にしても、一度慣れてしまえば心地良い旋律となって、ハンモックの様にそれに身を委ねること
Posted by ブクログ
「ときどき、せっかちな時鐘が前の鐘より二つ多く鳴ることがある。間の鐘をひとつ聞き逃したのか。現実にあった何かが私のなかで起こらなかった。深い眠りにも似た、魔術的な読書に対する関心が、幻覚にとらわれたかのような私の耳をはぐらかし、静寂に満ちた紺碧の空に刻まれた黄金の鐘の印を消し去ったのだ。」(213頁)
「眠っている人間は身のまわりに糸にも似た時の流れを、そして、長い歳月やさまざまな世界が持つ一定の秩序を輪のように巻きつけている。目覚めたとき、人は本能的にそれらを探って、自分が現在いる地点や目覚めまでに流れた時間を即座に読みとろうとする。だが、時の流れやそうした秩序はもつれて渾沌としているか