【画期的な新薬を開発した日本人研究者たちの物語】
新薬開発の舞台裏を詳らかにした本。
最先端科学の世界って表ざたにされる機会があまりないと思う (研究者や科学者が“いわゆる大衆向けの本”を書かないため)。なのでこういう、一般人向けにわかりやすく、研究者の仕事の内容や閉ざされた理系の世界を解説している本はとても貴重だと思う。
本書では、30年前~比較的最近(2,3年前)の間に開発され発売された薬について・および、その薬を開発した研究者たちについて、が詳細に記載されている。
論理的な試行錯誤で少しずつ改善を重ね、結果世に出ることになった薬もあれば、
ほんのたまたま、偶然発見されるに至ったきわめてラッキーな薬まで
さまざまな経緯が語られているのが面白い。
神秘的な基礎研究の世界。これからの日本の医療・薬学・化学界を担っていく若手研究者諸君のためにぜひ一読をおすすめする。
第一章
●スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬=コレステロール値を下げる薬)カビやキノコを活かした仕事6000種も試し最初のスタチン発見
第二章
●クラビット(レボフロキサシン=抗生剤)耐性菌との戦いで抗菌薬は進化する*血中濃度が高くても効かない*光学異性体の分割に賭ける→タリビットの光学異性体がクラビットだった。
●プログラフ(タクロリムス=免疫抑制剤)フィールドに出る微生物ハンター*シクロスポリンと似て非なる物*移植先進国での治験開始*アトピーの外用薬や点眼剤に展開
第三章
●レトロビル(アジドチミジン=エイズウィルス増殖抑制) レトロウィルスに取り組む*逆転写酵素阻害薬を目指す*眠り病の薬に可能性を見いだす*初の抗HIV薬は抗がん剤から
●ヴァイデックス、ハイビッド(ジダノシン、ザルシタビン=第3の抗HIV薬) DNA鎖の伸長を停止する薬、特許権をめぐる欧応酬
●プリジスタ(ダルナビル=耐性変異ウィルスに強い抗HIV剤)
第4章
●アリセプト(ドネペジル塩酸塩)コリン仮説からアルツハイマー薬*すぐれた薬効も生物学的利用率で挫折*ライフワークで根本治療を検討
●カンプト(イリノテカン=抗がん剤)
発酵屋が抗がん剤を志す*活性を維持しながら毒性を弱める*有効成分を含む類似植物を栽培
第五章
●フェブリク(フェブキソスタット=痛風・高尿酸血症の薬)
評価系が無かったDM薬*安定した既存薬をリード化合物に*高血圧のない高尿酸血症の適応
●ガスター(ファモチジン=胃酸分泌抑制薬) オールジャパンで国産第一号を*全社一丸となった治験
●パリエット(ラベプラゾールNa) 胃酸を必要以上に抑えてはならない*3番手ながら切れ味鋭い薬誕生
第6章
●リュープリン(リュープロレリン=前立腺がん、閉経前乳がんの薬) 性ホルモン増強剤で去勢が起こった 除法性製材により効果が持続
●ハンプ(カルペリチド=急性心不全薬) 試料を湯通しし分解酵素を失活 ヒト心臓から血管拡張ホルモン 脳の利尿ホルモン測定を診断に
●インターフェロンの発見 紫外線照射にも安定な分子 ウィルス増殖に干渉する因子 四半世紀を経て薬に
第7章
●アクテムラ(トシリズマブ=自己免疫疾患治療薬) B細胞誘導因子を突き止める 病気との関連が深いIL-6 IL-6受容体抗体のマウス→ヒト化に成功 世界のリウマチ患者へ
終章 日本人と創薬