作品一覧
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-待望の合本版!! かつての恋人を自殺に追いやってしまった罪の思いを一身に背負い、北海道の寒村で禁欲生活を続けていた矢口忍。だが、友人の誘いで赴いたシリアで、生と死が隣り合わせの砂漠の生活や、砂に埋もれそうになってもなお輝きを放つ遺跡を目の当たりにし、「生きる」ことの意味を捉え直そうとしていた。そんなとき、矢口はフランスの発掘隊に参加していた日本人女性、鬼塚しのぶと出会う。どことなくかつての恋人を彷彿とさせる彼女には、ある秘密があった――。 1976~77年に「毎日新聞」に連載された、「愛とは何か」「生きるとは何か」を鋭く、深く問う傑作長編小説の上下合本版。
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-贖罪の日々を送る男に許される日は来るのか。 東京郊外で大学講師を務める矢口忍。その聴講生・卜部すえの、誠実で奥ゆかしく、はかなげなところに惹かれ恋仲になるが、すえとはまったく違うタイプの女性に心を奪われ、結婚してしまう。 すえの「最後に、もう一度会いたい」という願いをにべもなく断った翌日、すえが自殺――。以来、矢口は北海道の寒村で中学校の教師になり、自分を罰するためにひたすら禁欲的な生活をしていた。 しかし、友人の誘いで出掛けたシリアへの旅をきっかけに、矢口の心に変化が生まれ、止まっていた時間が少しずつ動き出す――。 1976~77年に「毎日新聞」に連載された、「愛とは何か」を鋭く深く問う、傑作長編小説の上巻。
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4.0時には〈日常〉を脱して、魂の目くらむ昂揚を経験することも、人生を豊かにする大切な方法なのだ(本文より)。一九五七年の留学以降、第二の生活拠点となったパリ、創作への啓示を受けたアテネ、作品の舞台となったフィレンツェ、アルジェ……生涯を通じ旅を愛した作家の多幸感あふれるエッセイ集。 目次より I 地中海幻想の旅から 中部イタリアの旅 フィレンツェ散策 私の古典美術館 アッシリアの眼 ポンペイ幻想 廃墟の教えるもの 地中海幻想 力ルタゴの白い石 友をもつこと II フランスの旅から ヨーロッパの汽車旅 恋のかたみ モンマルトル住い 海辺の墓地から 早春のパリ 昔のパリいまのパリ 変ったパリ変らぬパリ フランスの知恵 パリの雀のことなど 回想のシャルトル 近い旅遠い旅 パリ――夢と現実 風塵の街から 回想のなかのゴシック III 北の旅 南の旅から ロシアの旅から一 ロシアの旅から二 森の中の思索から 北の海辺の旅 南イングランドから ハドリアヌスの城壁を訪ねて 大いなる聖樹の下 インド変容 旅立ちの前に 南の遙かな青い海 中国の旅から
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5.0闇市に現れた少年は神の子か狼か……石川淳「焼跡のイエス」、「国の守は狩を好んだ」に始まる王朝時代を舞台とした説話風物語「紫苑物語」、江戸人の精神に迫る「小林如泥」「鈴木牧之」「江戸人の発想法について」。 “大殿(シニョーレ)”織田信長の日本人離れした心と行動を異国人の眼を通すことで浮かび上がらせた歴史小説・辻邦生「安土往還記」。種田山頭火をめぐる文学史ミステリ・丸谷才一「横しぐれ」、小説的趣向に満ちた「樹影譚」。王朝文学や江戸文芸、西欧文学を礎に、稀代のモダニストたちが精緻に築き上げた傑作群を収録。 解説=池澤夏樹 年譜=中条省平 月報=鹿島茂・町田康
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-帆船という“劇場”で巻き起こる人間ドラマ。 海を愛する若者が生の歓びを求め、ブリガンティン型帆船<大いなる(グローセル・)眞晝(ミッタ-タ)>号に乗り込んで船出をする。 「無一物主義」という哲学思想をもつベルナールを船長に、フランソワ、ターナー、ケイン、女性のファビアン、そして日本人の私など11人のクルーは、ヨーロッパから日本を経由して、一路、太平洋へと航海を続ける。 やがて、南太平洋に入ると、荒れ狂う颶風(ぐふう)圏に突入していく中、嵐のさなかに恐るべき事件が起きてしまう。帆船の船内は、さながら芝居の劇場のように複雑な人間関係が入り組んで、それは悲劇への序章にふさわしい舞台だった。 辻作品らしい“詩とロマンの薫り”に満ち溢れた長編小説。
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4.0北欧で消息を絶った日本人女性の精神的彷徨。 織物工芸に打ち込んでいた支倉冬子は、一枚のタピスリに吸い寄せられ、魅惑されてしまう。ついにはヨーロッパに留学する決意までした冬子。だが、冬子は、ある夏の日、その地方の名家ギュルンデンクローネ男爵の末娘エルスと孤島にヨットで出かけたまま消息を絶ってしまう。 冬子が残した手記をベースに、生と死、または愛の不安を深く掘り下げた小説となっている。絶対的な孤独の中、日本と西欧、過去と現在を彷徨しながら、冬子はどのように再生していくのか……。 辻邦生が自著『生きて愛するために』で語った「死というくらい虚無のなかに、<地上の生>は、明るく舞台のように、ぽっかり浮かんでいる」という彼の死生観とともに、西欧的骨法によって本格小説を日本に結実させんとした、辻文学初期傑作の一つである。巻末に「創作ノート抄」を併録。
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4.0女流画家を通じ、“魂の内奥”の旅を描く。 異例の才能を持ちながら埋もれていった亡命ロシア人女流作家マリア・ヴァシレウスカヤ(マーシャ)の内的彷徨を描く辻邦生の処女長編作。 少女期に出会った魅惑的な少女アンドレとの痛みを伴った甘美な愛を失い、結婚に破れ、つねに芸術の空しさを苦汁のようになめながら、生の意味、芸術の意味を模索し続けた、寡作の画家マーシャの短い生涯を、彼女が遺した日記や手紙から辿る伝記風スタイルを用い、清冽な筆致で描いた作品 敬虔で慎み深く、絵の才能を持て余すマーシャと、身体が弱いために生に焦がれる無鉄砲なお嬢さまアンドレ、孤独を抱えるふたりの交流がとても丁寧に描写されている。第4回近代文学賞受賞作。
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ユーザーレビュー
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Posted by ブクログ
西欧人が語る大殿(シニョーレ)織田信長は、きっとこのような人物だったのだろうと思わせる。
好奇心高く芸術家を敬い西洋の技術に深く関心を持ち、道理を求め「事が成る」ことをもって自身の道を貫くために非情となり、それは周囲の理解を得られず孤立していく。
宣教師らには人なつこく冗談に笑うほど心を許したと言うのも安土城下にその城郭と同じ青瓦のセミナリオを建立させた事からも本当だったのだろう。
宣教師ヴァリニャーノがヨーロッパに帰国する事になった際、見送る為に催した夜の祭典で、安土城が一斉の篝火で浮かび上がった情景は素晴らしく、黒装束で信長自らがたいまつを掲げ宣教師に言葉を送ったと言うのも、西洋の宣教師ら -
Posted by ブクログ
これはぼくだけしか見られない、ぼくだけが見ている、ぼくの世界で、ぼくが死んでしまうと、だれもそのなかに入って知ることはできない。だから、この世界をだれかほかの人に伝えるためには、その感じ方、色彩、雰囲気を正確に書かないと、ぼくが死んでしまったら、もうこの地上から消えてしまう。 作者の、切実な、印象的なフレーズ。
……ついでながら、私が、辻邦生氏の作品の中で、一番好きなのは、短編、 献身 です。アルチュール.ランボオの生涯と彼の妹の、ランボオへの献身 をえがいた、ランボオの独白がすごい迫力で読んでいると、ゾクゾクして、くらくら感動します。…シャルトル幻想 という本の中に入っていて、 -
Posted by ブクログ
フィオレンツァの、壮大な叙事詩を読み終えた。
サンドロ(ボッティチェルリ)で始まり。
ロレンツォ(メディチ家)に継がれ。
ジロラモ(サヴォナローラ)で終わる。
芸術家(サンドロ)が生まれ。
パテント(ロレンツォ)が育み。
宗教家(ジロラモ)で影を落とす。
そんな4部作であった気がします。
今の世の中、ここまでの長編を読むに耐えれる読者が少なくなっている事もあるとは思うし、同じ言い回しを感じることも遠ざける理由かとは思いますが、やはりここまで長時間読むことに付き合うと、心に残る残像も、全然違ったものになるなーと思いした。
ただ、求められるからかと思いますが、長編やこんな叙事詩を書ける( -
Posted by ブクログ
花の季節に、西行墳のある弘川寺を訪ねようと思っていた。今年になって鳥羽の城南宮を尋ねた帰り、桜の季節までに評伝を読んでおこうと思いたって、辻邦生著のこの本を選んだ。
藤原鎌足を祖とする裕福な領主の家に生まれたが、母の願いで官職を得るために京都に出た。
馬術、弓道、蹴鞠、貴族社会の中で身につけなくてはならないものは寝食を惜しんでその道を極めた。
流鏑馬では一矢も外さない腕を見せ、蹴鞠は高く蹴り上げた鞠を足でぴたりと止めて見せた。
当時の社会で歌の会に連なることも立身出世の道だった。武芸が認められて鳥羽院の北面の武士になり、歌の道でも知られてきた。
鳥羽上皇の寵愛を失った待賢門院を慕ったことや