・あらすじ
三体作者による短編SF集。
5つの短編が入っていたけどどれも面白かったし、要素要素に三体と通ずるものがあった。
特に好きだったのが扶養人類と彼女の眼を連れて、の二篇。
老神介護→地球文明を作った20億柱の神が宇宙船に乗って地球にやってきた。目的は地球人とともに地球で老後を過ごすこと。全
...続きを読む世界で神を扶養するための法律が制定され各家庭で1柱の神と同居することになるが、両者の関係は徐々に悪化していく。
扶養人類→老神介護の続編。神がいなくなって三年。神が作った地球型文明の兄、第一地球の人類が地球へ移住にやってきた。
そんな中滑空という殺し屋は社会的資産液化委員会という世界の大富豪で構成された委員会の人間に3人の人間の暗殺を依頼される。
白亜紀往事→6500万年前の白亜紀には高度な文明を持った恐竜文明と蟻文明があり、双方は相互補完関係にあった。だが恐竜同士の対立から恐竜文明vs蟻文明に発展。そして白亜紀が終わるまで。
彼女の眼を連れて→宇宙空間での生活が当たり前になった時代。休暇を地球で過ごす為にとある女性の目(センサーグラス)をつけてタクラマカン砂漠へいく主人公。
地球大砲→人工冬眠から目覚めた沈は、地球環境を破壊した「南極裏庭化計画」の責任をとれと理由もわからないまま奈落の底へ落とされる。
彼女の眼を連れて、とクロスオーバーしている?作品。
・感想
老神介護→ひとだけでなく文明、恒星、宇宙ですらいずれ滅び(死)へと向かっていく。それは神ですら逃れられない真実。
創造主という意味での神ではあるけど、よくある万能の存在ではなくSF的捉え方での「神」の存在が面白かった。
あと兄文明である第一〜第三人類文明の辿った経緯は完全に黒暗森林理論で三体の要素を感じた。
扶養人類→神が警告した第一地球文明の宇宙船に乗っていた人類は第一地球から逃げてきた人々だったという真相が面白かった。たった一人の富裕層、世界が一人の人間のものになってしまったディストピアもの。
その理由も技術の発展に伴う富の集中、加速する格差という「なんだかあり得そう」なところが怖く感じたり。
滑空という暗殺者のキャラクターも良かった。
白亜紀往事→抑止力の必要性は理解してるけどエスカレートしていくのではないかという恐怖はある。
文明が発展していくためには「好奇心」や「欲」が必要ではあるけど、欲がエスカレートし暴走、制御できなくなってしまうことの危険性などを描いた作品なのかな。
彼女の眼を連れて→読後感が切なくてすごく良かったー。この話が1番好きだった。宇宙の果てではなく地球の中心に取り残された一人の女性の物語。
もし自分がこんな環境に置かれたら当然発狂してしまうわ…
地球大砲→まさかこの話で落日6号(彼女の〜の女性が乗っている地層探査船)が出てくるとは…!そこに繋がるとは!!
ただ一人地球の中心に残された女性の孤独も少しは慰められてたのかな。
人工冬眠から目覚めた主人公の沈が、中国から南極を貫くトンネルに落とされながら真実を語られるっていう設定が面白い。
でもどの被害者も逆恨みなんじゃないか?って感じがした。
確かに最初の事故の被害者が沈淵を恨むのは理解できるけど…。
沈淵が晩年トンネルを行き来しながら娘に語りかけてたっていうのがまた切なかったな。
どの話も面白かったし、作者の他の短編集も読んでみよう。