作品一覧

  • 独裁者の料理人:厨房から覗いた政権の舞台裏と食卓
    4.0
    1巻2,970円 (税込)
    フルコースで読む、元お抱え料理人たちの証言 歴史の重要な瞬間に彼らは何を目にしたか? 20世紀の独裁者5人に仕えた料理人たちの悲喜こもごもの人生。2021年度〈グルマン世界料理本賞〉受賞作。 大学卒業後、レストランでのアルバイト経験がある著者はあるとき、ユーゴスラヴィアの独裁者チトーの料理人についての映画を見て、歴史上の独裁者に仕えた料理人たちに興味を抱く。そしてついに本物の独裁者の料理人を探す旅に出る。 本書に登場する独裁者は、サダム・フセイン(イラク)、イディ・アミン(ウガンダ)、エンヴェル・ホッジャ(アルバニア)、フィデル・カストロ(キューバ)、ポル・ポト(カンボジア)。彼らに仕えた料理人たちは、一歩間違えば死の危険に見舞われた独裁体制下を、料理の腕と己の才覚で生き延びた無名の苦労人ばかりである。著者はほぼ4年かけて4つの大陸をめぐり、たとえ料理人が見つかっても、説得してインタビューに応じてもらうまでが一苦労で、なかには匿名で取材に応じる人もいた。 インタビューを再構成する形で料理人たちの声が生き生きと語られ、彼らの紆余曲折の人生の背後に、それぞれの国の歴史や時代背景が浮かび上がる。各章にレシピ付き。
  • 火星からの来訪者
    3.7
    1巻2,851円 (税込)
    第二次世界大戦でドイツが降伏した頃、アメリカのノースダコタ州とサウスダコタ州の境に隕石らしきものが落下する。しかしそれはただの隕石ではなく、火星から飛来したロケットであった。その中に乗り込んでいた奇妙な「火星からの人」がニューヨーク郊外の研究所に運び込まれ、科学者や技師などからなるチームが極秘のうちに、この火星人とのコミュニケーションを試みるが……『金星応答なし』に5年ほど先立つ、レムの本当のデビュー作とも言うべき本格的SF中篇『火星からの来訪者』、若き医師ステファン・チシニェツキは、町を歩いているときにユダヤ人と取り違えられて捕まり、他の無数のユダヤ人とともに貨車に押し込められ収容所に送られてしまう。ユダヤ人移送の決定的瞬間を描いた「ラインハルト作戦」、広島への原爆投下を主題にした、世界でもっとも早い文学作品の一つであり、SF的想像力を駆使して爆発の光景が創り出された「ヒロシマの男」など、レムがまだ20歳代だった1940年代から1950年にかけて書かれた、いずれも本邦初訳となる初期作品を収録。《星をちりばめた闇に茫然と言葉を失う者は/とても孤独で詩人に近い。》

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  • 地球の平和
    3.0
    1巻2,534円 (税込)
    自動機械の自立性向上に特化された近未来の軍事的進歩は、効果的かつ高価になり、その状況を解決する方法として人類は軍備をそっくり月へ移すことを考案、地球非軍事化と月軍事化の計画が承認される。こうして軍拡競争をAI任せにした人類であったが、立入禁止ゾーンとなった月面で兵器の進化がその後どうなっているのか皆目わからない。月の無人軍が地球を攻撃するのでは? 恐怖と混乱に駆られパニックに陥った人類の声を受けて月に送られた偵察機は、月面に潜ってしまったかのように、一台も帰還することがなかったばかりか、何の連絡も映像も送ってこなかった。かくて泰平ヨンに白羽の矢が立ち、月に向けて極秘の偵察に赴くが、例によってとんでもないトラブルに巻き込まれる羽目に……《事の発端から話した方がいいだろう。その発端がどうだったか私は知らない、というのは別の話。なぜなら私は主に右大脳半球で記憶しなくてはならなかったのに、右半球への通路が遮断されていて、考えることができないからだ》レムの最後から二番目の小説にして、〈泰平ヨン〉シリーズ最終話の待望の邦訳。

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  • 踊る熊たち:冷戦後の体制転換にもがく人々
    4.3
    自由とは新たな挑戦だ 第一部では、2007年にブルガリア最後の「踊る熊」たちがいかにして動物保護団体に引き取られたか、そして生業を奪われた飼い主のロマたちが陥った困難な状況について、さまざまな立場の関係者を取材する。第二部ではソ連崩壊以降のおもに旧共産主義諸国(キューバ、ポーランド、ウクライナ、アルバニア、エストニア、セルビア、コソボ、グルジア、ギリシャ)を訪ね、現地の人々のさまざまな声に耳を傾ける。そこに共通するのは、社会の変化に取り残されたり翻弄されたりしながらも、したたかに生き抜こうとするたくましさである。 第一部と第二部はそれぞれ同じ章立て。共産主義の終焉から資本主義に移行しきれない国、またはEUに組み込まれたことで経済危機に陥った国の人々の混乱と困惑を、隷属状態から逃れても「自由」を享受しきれない「踊る熊」たちの悲哀に見事になぞらえ、重ね合わせている。
  • 独裁者の料理人:厨房から覗いた政権の舞台裏と食卓

    Posted by ブクログ

    「これでもうわかっただろう、大統領のために働くというのがどういうことか」

    この言葉に集約されている。
    大変面白かった。同じ著者の「踊る熊たち」も素晴らしい本だった。ポーランド人である著者だからこそ書けた内容だと思う。

    0
    2024年04月24日
  • 独裁者の料理人:厨房から覗いた政権の舞台裏と食卓

    Posted by ブクログ

    独裁者に気に入られつつも、いつ殺されるか分からない恐怖に怯える

    独裁者のこどもが腹痛をおこし、急ぎ病院に連れて行く話や、仲のよかった友人が実は自分を密告していたり

    もう小説のようなエピソードがたくさん

    一方で独裁者の優しい一面を語る料理人もいる
    決して歪んだ認識というわけでなく、おそらく正しい一面なのだろう

    そういう点も含め素晴らしい
    ハンターハンターの蟻編のストーリーみたいだ

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    2023年08月12日
  • 火星からの来訪者

    Posted by ブクログ

    楽しみにしているレム・コレクション。第二期は順調に出版されていて誠に喜ばしいです。
    実質のデビュー作である表題作含め非SF短編も含む初期作品集。書かれたタイミングは戦時中でありしかも場所は現在も禍中にあるリヴィウ。ドイツに占領されていたりポーランド領だったりソ連だったりと過酷な経緯を辿る街で、また今も翻弄されています。ホロ・コーストのストレートな場面を描かれた短編も含まれており、ユダヤ人でもあったレムはこんな環境のなかでも作品を書き続けていたのがよくわかります。「ヒロシマの男」も印象的です。発表されたのは原爆投下後の二年後と早く、いかにレムも衝撃を受けていたことがわかります。感情的なじとじとし

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    2023年03月28日
  • 踊る熊たち:冷戦後の体制転換にもがく人々

    Posted by ブクログ

    今年一番、すすめたい本。

    前半はブルガリア・ロマの熊使いの伝統の終焉の、人と熊と。自由は社会の設定ではないのだと感じる。しかし社会の設定は自由な社会を設定しようとする。これは社会の過渡期なのだろうか?そう考えるよりも、自由は能力のように上達させるものなのだろう。

    日本に限らないと思うが、自由は置かれているのに閉塞感が強い。いや、足枷はないがルールがある。社会なら仕方がない質のものはあるだろうけど、問題なものもあるだろう。ただ、案外に好きにすればと放任されている。こういった暮らしを知ると。例外は一旦置いといて。

    便利なのだ。道具だけでなく仕組みも。広い意味での道具が便利で、扱いに注意しなく

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    2022年06月19日
  • 独裁者の料理人:厨房から覗いた政権の舞台裏と食卓

    Posted by ブクログ

    ファーストインパクトは著者のポートレート写真だった。
    「一度料理人になりかけた」というジャーナリストの佇まいは、満面の笑みでもカバーしきれていないほどの強面。こんな人物に訪ねて来られたら、嫌でも口を割らねばなるまい…。
    だが本書でインタビューを受けるのは「独裁者」に仕えていた元料理人たち。強面の来訪とは比べものにならないほど、恐ろしい瞬間に立ち会ってきたはずだ。(何より貴重な生き証人である)

    「世界の運命が動いたとき、鍋の中では何が煮立っていたのか?[中略](料理を)見張っていた料理人たちは横目で何に気付いただろう?」

    ポートレートを皮切りに、そこからは本の構成に魅せられていった。
    著者は

    0
    2024年05月24日

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