作品一覧

  • いずれすべては海の中に
    4.1
    1巻1,760円 (税込)
    最新の義手が道路と繫がった男の話(「一筋に伸びる二車線のハイウェイ」)、世代間宇宙船の中で受け継がれる記憶と歴史と音楽(「風はさまよう」)、クジラを運転して旅をするという奇妙な仕事の終わりに待つ予想外の結末(「イッカク」)、並行世界のサラ・ピンスカーたちが集まるサラコンで起きた殺人事件をサラ・ピンスカーのひとりが解決するSFミステリ(「そして(Nマイナス1)人しかいなくなった」)など。 奇想の海に呑まれ、たゆたい、息を継ぎ、泳ぎ続ける。その果てに待つものは――。静かな筆致で描かれる、不思議で愛おしいフィリップ・K・ディック賞を受賞した異色短篇集。 アーシュラ・K・ル=グウィンや、ケリー・リンクの作風を受け継ぎながら、彼女自身の不屈の声が全面に響いている。 ――〈カーカス・レビュー〉 幻想的な要素を含みながら、同時に、現実にある身近な喪失と痛みに根ざしたほろ苦い物語だ。この物語には、美しい繊細さがある。思索的(スペキュレイティヴ)な要素で読者の頭を殴ることはなく、物語の多くの側面を行間に残している。ピンスカーはサブテキストを非常に巧みに扱い、ページ上ではひとつの物語しか描かれていないが、読者にはふたつの完全な物語が提示されている。 ――A・C・ワイズ(作家) 【短篇集として】 2020年度フィリップ・K・ディック賞受賞作 2020年度ローカス賞短篇集部門候補作 2020年度世界幻想文学大賞候補作 【収録作品一覧】 「一筋に伸びる二車線のハイウェイ」(2015年度ネビュラ賞短篇部門候補作) 「そしてわれらは暗闇の中」 「記憶が戻る日(リメンバリー・デイ)」 「いずれすべては海の中に」(2017年度ネビュラ賞短篇部門候補作) 「彼女の低いハム音」 「死者との対話」 「時間流民のためのシュウェル・ホーム」 「深淵をあとに歓喜して」(2014年度シオドア・スタージョン賞短篇部門受賞作、ネビュラ賞中篇部門候補作) 「孤独な船乗りはだれ一人」 「風はさまよう」(2018年度ヒューゴー賞中篇部門候補作、ローカス賞中篇部門候補作、ネビュラ賞中篇部門候補作) 「オープン・ロードの聖母様」(2016年度ネビュラ賞中篇部門受賞作、ヒューゴー賞中篇部門候補作、シオドア・スタージョン短篇部門候補作) 「イッカク」(2020年度ローカス賞中篇部門候補作) 「そして(Nマイナス1)人しかいなくなった」(2016年度ヒューゴー賞ノヴェラ部門候補作、シオドア・スタージョン短篇部門候補作、ローカス賞ノヴェラ部門受賞作)
  • 創られた心 AIロボットSF傑作選
    3.8
    1巻1,500円 (税込)
    人工的な心や生命。ゴーレム、オートマトン、ロボット、アンドロイド、ボット、人工知能――人間ではないが人間によく似た機械、人間のために注文に応じてつくられた存在というアイディアは、はるか古代よりわたしたちを魅了しつづけてきた。そしていま、その長い歴史に連なる最新のアンソロジーがここに登場する。ケン・リュウ、ピーター・ワッツ、アレステア・レナルズ、ソフィア・サマターをはじめ、本書収録作がヒューゴー賞候補となったヴィナ・ジエミン・プラサドら期待の新鋭を含む、今日のSFにおける最高の作家陣による16の物語を収録。/【目次】われわれが必要とする「他者」をつくるということ=ジョナサン・ストラーン/働く種族のための手引き=ヴィナ・ジエミン・プラサド/生存本能=ピーター・ワッツ/エンドレス=サード・Z・フセイン/ブラザー・ライフル=ダリル・グレゴリイ/痛みのパターン=トチ・オニェブチ/アイドル=ケン・リュウ/もっと大事なこと=サラ・ピンスカー/ソニーの結合体=ピーター・F・ハミルトン/死と踊る=ジョン・チュー/人形芝居=アレステア・レナルズ/ゾウは決して忘れない=リッチ・ラーソン/翻訳者=アナリー・ニューイッツ/罪喰い=イアン・R・マクラウド/ロボットのためのおとぎ話=ソフィア・サマター/赤字の明暗法=スザンヌ・パーマー/過激化の用語集=ブルック・ボーランダー/謝辞/解説=渡邊利道
  • 新しい時代への歌
    4.5
    1巻1,650円 (税込)
    音楽と熱狂 音楽が彼女を動かす。熱狂が彼女を変える。 テロと感染病の影響で、ひとびとが直接会う機会は激減した。観客を入れたライブなどは参集規制法によって禁じられている――。 ローズマリーは超巨大企業スーパーウォリーに勤め、自宅からアバターで顧客に対応する、単調な日々を過ごしていた。だがある日、顧客から仮想空間で行われるライブのチケットをもらったことで彼女の人生は変わる。音楽の新たな魅力を知ったローズマリーは、転職し、密かに行われているライブから新たなミュージシャンを発掘するスカウトになることを決意するのだが――。 他人と接触することがなくなった時代、禁止されてもなおライブの熱狂を求めるひとびとを描いた音楽SFの傑作。2020年度ネビュラ賞長篇部門受賞作。
  • いずれすべては海の中に

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    13編の短編が収められている。うち3編はやや長め。
    ほとんどがSF的な設定となっているが、SFを全面に押し出すのではなく、SF的世界の中における人間の感情や生き方が描かれているという感じ。
    丁寧に静かな文体で書かれていてじっくりと浸りながら読める。
    特に後半の4編はそれなりの長さがあることもありテーマに深みのある力作でとてもよかった。

    1. 一筋に伸びる二車線のハイウェイ
    事故で腕を失い機械義手をつけるが内部のチップに使われているソフトウェアがコロラドのハイウェイで使われていたもののリサイクルだったため、自分の腕がハイウェイと一体化したように感じる。手術でチップを交換するが、ハイウェイの記憶

    0
    2024年03月10日
  • 創られた心 AIロボットSF傑作選

    Posted by ブクログ

    SFってやっぱ面白い、と思わせてくれる16編と盛りだくさんの短編集。文庫も物価高騰のあおりを受けてこんなに高くなったか・・・と思いつつ買ったが、元は取れたと思う。

    どの作品も味わい深いのだが、意識を持ったAIは物理的につながりさえできれば、ハード(シャーシ)を乗り換えていけるって設定が興味深い。人間が求めてやまない不死不老をAIなら実現できるという夢。
    究極は「罪喰い」の世界で、人間はみな仮想空間(天国)に旅立ち、荒廃した地上にはロボットだけが残る。遺していく記憶を選べるってとこが業だ。

    一方で、製品が成長したり、メンターがいたり、ロボット同士のいじめがあったりって世界の作品もあって、自意

    0
    2023年06月30日
  • いずれすべては海の中に

    Posted by ブクログ

    朝焼けを迎える宙なのか、それとも夕暮れに向かう海なのかー淡い彩色の装丁に包まれた物語の世界に浸ると空気の組成が少し変わり始める。忍び込んだ異質な空気が肺を満たすとき、追憶の中の未来-辿り着くことのない、いつかどこか-がゆらゆらと立ちのぼってくる。
    それは旅先で目にした知らないはずの風景に感じる懐かしさと、それと同時に決してその風景に含まれることはない哀しみにも似て、心をさざなみが通り過ぎていく。
    失われたものへの哀惜と失ったものを語るときの優しさが、“今”を生きる真っ直ぐな力強さと溶け合って余韻を残す、美しい作品が集められた短編集だった。

    『一筋に伸びる二車線のハイウェイ』
    オートメーション

    0
    2023年06月11日
  • いずれすべては海の中に

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    普段あんまりSFは読まないんだけど、これはかなり好き。最初の「一筋に伸びる二車線のハイウェイ」から、突然の事故で付けることになったハイテク義手が「自分は道路だ」と脳内で主張してくる…という突拍子もない調子で始まり面白いし、オチが秀逸。
    「深淵をあとに歓喜して」の老夫婦の看取りの話も良かったし、「風はさまよう」の、人間と地球が何のかかわりもなくなったら、歴史とは、音楽とはいったいどういうもので、何の意味を持つのか、という重い問いかけに突っ込んでいくのもすごかった。それぞれの短編で設定は全部違うし今の現実とは乖離しているけど、出てくる人間の感情や行動に手でさわれるようなリアリティがあるから面白くな

    0
    2023年06月08日
  • いずれすべては海の中に

    Posted by ブクログ

    良質なSF!
    流れる空気感や、話ごとに徐々に明らかになる世界観への気付きが面白くてたまらない。
    収録されている話の順番も絶妙だと思う。
    「どういうこと?」「こういうこと?」「なるほど!」とどんどんサラ・スピンカーの世界観に引き摺り込まれていった。
    最後に"そして(Nマイナス)人しかいなくなった"

    小説だけでなく、音楽や海、自然や環境を愛する人にも刺さるサイエンスフィクション。

    0
    2023年01月27日

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