サーシャ・フィリペンコの作品一覧

「サーシャ・フィリペンコ」の「赤い十字」「理不尽ゲーム」ほか、ユーザーレビューをお届けします!

作品一覧

  • 赤い十字
    4.3
    1巻2,178円 (税込)
    青年が引っ越し先のアパートで出会った、90歳の老女。アルツハイマー病を患う彼女は隣人に、自らの戦争の記憶を唐突に語り始めた。モスクワの公的機関で書類翻訳をしていたこと、捕虜リストに夫の名前を見つけたこと、ソ連が赤十字社からの捕虜交換の呼びかけを無視していたこと――。ベラルーシ気鋭の小説家が描く、忘れ去られる過去への抵抗、そして未来への決意。
  • 理不尽ゲーム
    4.1
    1巻2,310円 (税込)
    欧州最後の独裁国家ベラルーシ。その内実を、小説の力で暴く。群集事故によって昏睡状態に陥った高校生ツィスク。老いた祖母だけがその回復を信じ、病室で永遠のような時を過ごす一方、隣の大国に依存していた国家は、民が慕ったはずの大統領の手によって、少しずつ病んでいく。10年後の2009年、奇跡的に目覚めたツィスクが見たものは、ひとりの大統領にすべてを掌握された祖国、そして理不尽な状況に疑問をもつことも許されぬ人々の姿だった。時間制限付きのWi-Fi。嘘を吐く国営放送。生活の困窮による、女性の愛人ビジネス。荒唐無稽な大統領令と「理不尽ゲーム」。ジャーナリストの不審死。5年ごとの大統領選では、現職が異常な高得票率で再選される……。緊迫の続く、現在のベラルーシの姿へとつながる物語。
  • 理不尽ゲーム

    Posted by ブクログ

    独裁者に支配されるベラルーシで実際に起きていることが、昏睡状態の孫に語り掛けるばあちゃんや友人の話で割と淡々と描かれます。抵抗しては潰されることを繰り返すようで、閉塞感と絶望感を覚えました。一度狂った独裁者を産んでしまった国は、国民を丸ごと理不尽な渦に巻き込んでしまうことをロシアやベラルーシから感じました。
    一方、孫の回復を諦めないばあちゃんの本当の愛情にも胸が締め付けられるようで、手紙のシーンは涙なしには読めません。
    訳者の言うように、読み終えたらまた読み直したくなりました。すごい価値のある一冊です。

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    2022年11月07日
  • 理不尽ゲーム

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    ロシアに隣接しているベラルーシという国のある若者の物語。
    10年間、脳死状態でいて生き返ったという特殊な内容もさることながらこの国で興っている事を厳しい批判の眼で伝え、発信するという穏やかではない現代の体制を書いている。

    自国では発刊出来ない内容であるとともに、
    世界的にみてもこのようなことは氷山の一角なのかもしれないと思わせてくれる。
    また、読んでみたい。

    0
    2022年10月07日
  • 赤い十字

    Posted by ブクログ

    奈倉さんの訳という事で触れた当作。思った以上の素晴らしい内容、展開、心が打たれた。
    読みながらも胸のビブラードがふるえ、サーシャの心中、タチヤーナの本懐がすれ違う様で、クロスして行くプロセスに、笑えない現実の重さを感じさせられた。

    彼女が経験してきた人生航路の壮絶さは語りの軽やかさと反比例して居るだけに、圧倒されんばかりの熱が地中で迸っている・・静かなるマグマの様に。

    ただでさえ「鉄のカーテン」が惹かれたソ連、外務省、翻訳という業務・・・そして捕虜名簿。
    フィリペンコという冷たく熱い才能の作家を知れたことは幸い~「理不尽ゲーム」を是非読みたいと思った。

    この数年、ロシアは遠くて未知の国と

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    2022年08月27日
  • 理不尽ゲーム

    Posted by ブクログ

    「赤い十字」に続いて、フィリペンコのデビュー作である本書を読む。
    ベラルーシの現実に暗澹たる気持ちになる。
    ルカシェンコ大統領の強権による虐殺、統制管理の残虐さは、同じ地球に生きていて申し訳ないと思うほど。

    ツィスクの昏睡は民主主義のメタファーだ。ツィスクの目覚めを信じて語り続け励まし続ける祖母の最後の手紙で泣けた。肉親としての愛と、ベラルーシへの愛。

    奈倉有里さんの訳もすばらしい。訳者後書きもまた。(これを読めばベラルーシの現状もこの本の読み方も全てわかる)

    本屋大賞の「同志少女よ敵を撃て」のおかげで、ウクライナ侵攻の現状や歴史に、関心が移ってきた。奈倉有里さんと逢坂冬馬さんが姉弟だと

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    2022年08月05日
  • 赤い十字

    Posted by ブクログ

    認知症のタチヤーナばあさんが、向かいの部屋に引っ越してきた青年サーシャに自身のこれまでのことを語る。戦時下のソ連で夫は捕虜になって帰らず、当局の粛清に怯えて暮らすうち、突然逮捕されて幼い娘と引き離され収容所に送られる。
    当時のソ連が自国民を粛清し、外から差し伸べられる手を無視し続けたことなどがタチヤーナの語りと電文で伝えられる。淡々としているようだが彼女の国家に対する疑問や怒り、深い悲しみが静かに胸に迫ってきた。
    タチヤーナの認知症は、こうした体験が語られることなく風化していくことの象徴なのか?そしてまた似たようなことが繰り返される。

    0
    2022年07月05日

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